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木質の偽造ペレット工場

東方の二次創作SSです。いぢめ・グロ注意

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一角の暴君

メインキャラクター:勇儀 パルスィ

【 story 】
橋姫に恋をした暴君の話
地底


地上に繋がる洞穴と旧都を繋ぐ橋
「水橋パルスィ様」
「 ? 」
その橋の上から、水面をぼんやりと眺めていたパルスィに声をかける男がいた
男は鬼で、地底の住人にしては清潔そうな身なりをしていた
「勇儀様がお会いしたいと申しております、お手数ですがご足労願えませんでしょうか」
そう言って恭しく頭を下げる鬼の後ろには駕籠と担ぎ手が控えていた
「そんなものはいらないと前に言ったはずだけど?」
冷めた目で駕籠を見る。金箔が満遍なく張られ、銀や鈴で出来た装飾で彩られたそれは、大国の王のために作られたと言っても誰もが納得してしまう一品だった
「勇儀様から、パルスィ様は手厚く遇せよと承っております。どうかご容赦を」
「こんな目立つのに乗るくらいなら、歩いて出向いたほうがマシよ」
「そのようなことをされては勇儀様の怒りを買い、我々使用人の首が言葉通り飛んでしまいます故、何卒」
「・・・・・・」
ため息を一つ吐き、パルスィは駕籠に向かい歩きだした








駕籠で運ばれた先は、旧都の外れにある大きな御殿だった
「わざわざ呼び立ててすまないね」
御殿の主、星熊勇儀が彼女を出迎えた
「駕籠でのお迎えは嫌だと言ったはずよ」
「おや? 気に入らなかったかい? なら今度はもっと良い駕籠を用意するよ」
見当違いなその言葉に、パルスィはわずかばかり眩暈を感じた

今勇儀は普段外を出歩く際の衣装とは違い、このときは和服を身に纏っていた
「普通は逆でしょう。どうして家にいるときにだけ贅沢なものを着るの?」
「あっちの方が動きやすいからね。この恰好だと戦いづらい。それにパルスィが来てくれるのなら、めかし込むのは当然だろう」
勇儀は袖を開いてクルリを回って見せた。回った際、着物の裏地が見えた。裏地の模様はきめ細かく、着物の善し悪しがわからないパルスィでも高級なものだと理解できた
「使いの者が何か失礼を働いたかい?」
「いいえ、とても紳士だったわ」
「そうかい。なら良かった、今度の奴はなかなか優秀なようだ・・・・・・おっとここで立ち話もなんだ、まあ上がりなよ」

通された和室の四隅には、地底ではまずお目にかかれない鮮やかな色の花が飾られていた、甘い香りがパルスィの鼻腔をくすぐる
「丁度、昼時だし。一緒にどうだい?」
膳が二人分運び込まれ。パルスィは部屋の一番の奥に座るよう促された

「その干しアワビなんて珍しいだろう? 昨日、久しぶりに地上に出て妖怪の山に顔を出したんだ。そのときに金子(きんす)と一緒にもらってね」

現在天狗が統治している妖怪の山は、かつて鬼が支配していた
山に住む天狗や河童にとって、鬼は自分たちの元支配者にあたる
鬼の四天王である勇儀がやって来たとなれば、それ相応の応接をしなければならない

「行く度に金やら珍品やらを貰うもんだから、なんだか小遣いをせびってるみたいで申し訳ない気持ちになるよ」
「それをわかっていて定期的に行くんだからタチが悪いわね」
「私はあいつらと飲みたいんだよ。それなのに『これやるからさっさと帰れ』みたいな対応しかしてこないからさ。こっちは金なんていらないのに」
「そうね。アンタにとっては端金でしょう。その金子にいくら包まれているかなんて知らないけど」

星熊勇儀が金に困ることは有り得ないことだった

「私としては宵越しの金を持つ気なんてなんだが・・・・」
酒好きの勇儀は、酒蔵を立てて下っ端の鬼どもに作らせた、余った分を周りに配ったら思いのほか好評だった
ちょっとした小遣い稼ぎのつもりで売りに出したら、いい儲けになることを知った

「下手に商売なんてやるもんだから、今まで関わりの無かった地底の商人が言い寄って来ちまった」

実力は地底随一。鬼四天王の一人である勇儀を知らぬ者は地底にいない
そんな地底の超有名人が商いに手を出したとなれば、お近づきになりたいと思うのが金儲けを考える者の性である
「そこからまた儲け話が色々入ってきてさ」
契約書にサインをして、僅かな資本を渡すだけ、あとは全部丸投げ、他は一切知らない
「たったそれだけのことをして毎日毎日、身に覚えのない金が私んトコに運ばれてくる。使うよりも溜まる方がずっと早い」
あれよあれよという間に、勇儀は長者の仲間入りを果たしていた
今の御殿もその儲けで建てた

「今更そんな話をしてなんのつもり? 自慢?」
「私と一緒になれば、それなりに良い暮らしができるってことを知ってもらいたくってね」

箸を持つ手を止め、勇儀は真っ直ぐにパルスィを見た

「そろそろ返事を聞かせてくれないか?」
「返事なら何度も返してるはずよ。私は同性愛者じゃないわ。アンタの伴侶になる気は無い」
勇儀はパルスィに求婚していた
「同性愛とはちょっと違うな」
困った顔をして腕を組む
「私は性別には拘らないだけだよ。逞しい男がいたら抱かれたい、美しい女がいたら抱きたいと思う。その逆もしかり」
鬼にとって性別など瑣末なことだと言いたいらしい
「どちらにせよ。アンタの好意には応えられない」
「そうかい。気が変わったらいつでも言っとくれ。気長に待つよ」

いつも振られるということもあり、このやりとりは勇儀にとって挨拶みたいなものだった
お互いに食べ終わり、勇儀が手を叩くと使用人がやってきて膳を下げて行った

「そういえばパルスィ。これから暇かな? 連れて行きたいところがあるんだ」
「断っても強引に連れて行く気でしょう」
「流石、よく分かっている」
「出来ればあの駕籠はやめて欲しいのだけれど、見るだけで背中がムズ痒くなる」
「そうは言っても、地底の道は荒れてるから馬車ってのはなあ。第一こっちから誘っておいて『歩け』なんて失礼だろう」

結局、半ば強引に駕籠に乗せられることになった







移動中、納得いかない表情のパルスィ
「そもそも・・・」
二人入ってもまだ余る広さの駕籠に揺られながらパルスィは勇儀に尋ねた
「なんで私みたいなのを好いてるの?」
勇儀から好意を伝えられていても、まだその理由を聞いていない
「言わなきゃ駄目かい?」
「当たり前でしょう。好きだ好きだと言われ続けて、その根拠が不明瞭じゃあ気持ち悪いわ」
「あ~~それもそうだねぇ」

俯いて、頭をガシガシと掻いた。とても気恥ずかしそうに見えた

「なんていうかな。初めて会ったとき『綺麗だな』って思ったんだ」
「皮肉にしか聞こえないわね。綺麗どころならあなたの周りに掃いて捨てるほどいるでしょう、私のような醜女(しこめ)を捕まえてよくもまあそんな言葉が吐けるわね」
「パルスィだって相当な美人だよ。それに加え一緒にいるとすごく楽しい」
「心外ね。つまんない女よ私は」
勇儀の言葉はすべて彼女にはお世辞にしか聞こえなかった
「いいや。そんなことは無いさ・・・・・・・・・・・・・・うん、そんなこと絶対に無い」
何かを思い出すように繰り替えした


「それで、これから何処に行こうというの?」
「パルスィはいつも誰かを見ては『妬ましい妬ましい』だろ? だから妬ましくない奴ばっかりのところに連れて行ってあげようと思って」
「そんなところ存在するのかしら?」
「あるともさ。ほら着いた」


外へ出ると目の前に洋館があった
「ずいぶんと大きなお屋敷ね」
「そうだろう、自慢の娼館さ」
「娼館?」
「ご存知。女が体を売るところ」
入り口の前に立つ体躯の良い男が二人、勇儀の姿を見るなり扉をあけ、揃ってお辞儀をする

館の中に足を踏み入れると、すぐさま従業員が駆け寄ってきた。背の高い雄の天狗だった

手揉みしながら今月の売り上げと、新しく入った女の人数を述べる
一通り報告して、勇儀と一緒に来店したパルスィに気がついた
「ほほぅ。素材は悪くないですね。磨けば案外上玉に・・・」
パルスィを勇儀が連れてきた新しい遊女と勘違いしたのか、値踏みするように頭から足を見てから、いやらしい手つきで彼女に手を伸ばす
「おい」
伸ばされた腕を勇儀は掴んだ
「気安く触れるな」
従業員の腕が真ん中あたりから垂直に曲がった。折るという生易しいものではない、骨を握力で粉砕していた
「彼女はゲストだ。わかったかい?」
「~~~ッ!! ~~~ッ!!」
声にならない声をあげ、男は涙目になりながら何度も頷いた
「まったく礼儀のなってない奴だね。そんなだから山から追い出されるんだよ」
それでも勇儀は手を離さない。なおも力を入れて骨を圧迫する
痛みで失禁するまで、男は解放されなかった

「不愉快な思いをさせてすまないね。さて、中を案内するよ」
パルスィの背中に手を当てて奥へ進んでいった

「アンタがココのオーナー?」
「そうさ。借金のカタだとかそんな碌でもない理由で連れてこられた女を集めて開いたんだ。どうだい? 妬ましいと思える奴なんてここにはいないだろう?」
「まさか私のために建てた、なんて言うんじゃないでしょうね?」
「大見栄をきってそう言いたいのは山々だけど生憎と自分のためさ。この娼館は道楽と実益を兼ねて、初めて私が全部考えたものさ」

廊下ですれ違う遊女や勤め人は勇儀の姿を見ると、みんな道の端に立ち頭を下げる

「コースは松、竹、梅とある。梅ってのが指名なし本番なし、だから非常にリーズナブル。竹ってのが指名あり本番あり、コッチは少し値が張る。
 松はちょいと自由度が高くてアブノーマルなのが認められてる。オプションが沢山ついているから小金持ち向けだね」
歩きながら娼館のシステムを紹介する
「具体的に松ってのは処女の娘を指名できたり、遊女に排泄を強要。あとはソフトなSMプレイ、S側でもM側でもどっちでも可。他にも複数で楽しめたりとかもあるね」
全部、自分で考案したのだと上機嫌に語った
「そして地底で特別な階級の者に用意されたコースというのもある」

廊下の最奥『関係者立ち入り禁止』のドアの前で、勇儀は足を止めた
着物の袖から鍵を取り出してそこに差し込む。扉をあけるとすぐまた扉があり、廊下を歩く第三者には中が見えない構造になっていた

二つ目の扉の向こう、下に続く階段が現れる

「お疲れ様でございます支配人」
階段を降りてすぐ、受付と書かれたカウンターに座る老人が挨拶をした。老人の頭には角が二本生えていた
「そちらのご令嬢は?」
老鬼は物腰も柔らかく、気品ある仕草でパルスィを見やる
「この子が水橋パルスィさ。失礼のないようにしなよ」
「貴女様が水橋様ですか。噂はかねがね」
萎縮するように畏まった

パルスィは地下室を見回す。廊下の広さ、天井の高さは上の階と変わらないが、先ほどまでの小綺麗な内装が一変しており、薄暗い廊下に小窓の付いた扉が奥までずらりと並んでいた

「まるで監獄か収容所ね」
「まるでじゃなくて、実際にそうなんだよ。どの扉の一つでも良い、覗いてみなよ」

一番近い扉の前に立ち、扉についた小窓から中をのぞき込んだ

「これは・・・」

右足の無い、首輪で繋がれた少女がそこに居た。その目に生気はなく、ただ虚空を見つめるだけで、服は上半身にボロ布を巻いただけのお粗末なものだった

「他も見てみるといい」

隣の女性は五体満足で拘束を受けていなかったが、様子がおかしい
狭い独房の中で奇声をあげて踊り狂い、糞をひりだし壁に塗り付けて絵を描き遊んでいた

「ここは片輪や、頭がイカレた女を飼っている」

娼館で働く者でさえ知らない場所。ここを知る従業員は勇儀に認められたごく極少数である
「大金がポンと払えて、社会的信頼のある客しか教えない裏コースがこの階さ。ここではなんでもやっていい」
「なんでも?」
「そうなんでも。それこそ殺したって一向に構わない。殺したときは、その分の代金を貰うだけ。払うものさえ払ってくれればお持ち帰りだって認めてる」

無人の部屋の中には、性交を行うにはおおよそ似つかわしくない器具が並んでいた

「性玩具の他に、拷問器具や古今東西の武具、毒薬なんかも揃っている。ここじゃあ鞭打ちなんて愛撫みたいなもんさ」

客はこの監獄の中から自分好みの遊女を選び、奥のプレイルームで楽しむというシステムになっている

勇儀はパルスィの手をつかんだ
「特別に真っ最中のところを見せてあげるよ」
カウンターの裏に設置された通路に入る。曲がりくねった道をしばらく進むとカーテンの掛かっている箇所を見つけた

「ここから中の様子がバッチリ見える。大丈夫、向うからは絶対に気付かれないようになっているから」

カーテンを開けて現れたガラス張りの向こう側、小太りの男が片輪の女をいたぶっている場面だった
女が後ろから犯されながら、背中に煙草の火を押しつけられている。女が泣くたびに小太りは豚のような声で笑った
ガラス窓の横に鉄製の筒がついており、筒先の蓋を外すと中の音がそこから聞こえる仕組みになっていた
勇儀が遊女についての補足を入れる
「あの女は先週入ったばかりでね、元々は力に自信のある妖怪で洞窟の掘削所で働いてたけど、落盤事故に巻き込まれてあのザマさ。乳もデカくて熟れた良い体をしてたんだけどね」
事故で右足、右腕、右の乳房を失い。顔の右側にも包帯を巻いている
身内の居ない彼女は、様々なところをたらい回しにされ、最終的にこの娼館に安く買い叩かれた
「なまじ最近まで健常者だったせいで、良く叫ぶし泣くし抵抗するしで、お客に大人気」
筒の蓋を閉める直前に、女の助けを求める声が漏れ出た
しかし、特に気に留める様子もなくパルスィは勇儀の後に続いた



次のカーテンまで移る

「あの女ってたしか・・・」
「そう、地霊殿の主人、古明地さとり」
さとりは、少年を全裸して四つん這いにさせ、その尻を乗馬用の鞭でめった打ちにしていた。腕を振るう動作は力強く、鞭を扱い慣れているのがわかった
「あの男の子も、ここの子?」
見たところ体はどこも欠損しておらず、気の違った様子も無い
「いいや。地霊殿からペットを連れてきて、ここで楽しんでいるのさ」
「なんでわざわざ? 自分のところでやれば済む話でしょう」
「そりゃあ、ここの方が面倒が無いからね」
「面倒?」
ずたずたになった少年の尻をさとりは指先でなぞり撫で回したあと、まるで牛の乳でも搾るかのように勃起する幼いペニスを手で弄んだ
射精した瞬間に腹を蹴飛ばして彼が悶絶している間に、壁に掛かった金槌を手にとって彼の顔に振り下ろした
一度、二度、三度、淡々とさとりは金槌を少年の顔に振り下ろし続ける
そして額が割れ頭蓋骨が陥没したせいで余命数分となった子供の前で、スカートはそのままにして下着だけ脱ぎ、少年の顔に腰を下ろした
少年の鼻がクリトリスに当たるよう騎乗し、自慰に没頭しはじめた








次の場所にやってくる

青年が少女を抱き寄せて愛でていた
「あの男は、地底で最も規模のデカい自警団の統括長の倅なんだけどね。昔、女に手ひどく振られて以来、まともな恋愛が出来なくなって。ああいう頭がイかれた女しか相手に出来なくなったんだ」
「ずいぶんと情けないわね」
少女の服を優しく脱がせると、その体には思わず目を背けたくなるような傷跡がいくつもあった
「あ゛~~う゛~~~あ゛~~~」
「怖がらなくてもいいよ」
青年はゆっくりと少女の頭を撫で、丁寧にその唇を唇で塞いだ
「これまで辛い思いをたくさんしたんだね。もう大丈夫、僕は酷いことしないから」
優しくされたのは久しぶりなのか、少女は急に泣き出した
「あっちの餓鬼は生まれてすぐに親に棄てられて、浮浪児やってたんだけど、レイプされまくってる内に頭を少々やっちまってね」
小動物を連想させる彼女は、サディストの良い標的となっていた
「男はもう何人もあんな女を引き取って、屋敷で飼ってるんだ。んで数日後には飽きたからって理由で殺して庭に埋めちまう。あの娘も持ち帰られるのかねぇ」







覗き通路から戻ってくると、プレイルームから出てきたさとりと受付で鉢合わせした

「覗き見とは良い趣味をお持ちですね」
「あの子供はどこで調達したのだい? なかなかの美少年だったけど」
「地霊殿で飼っているペットの中の一匹です。種族はお空と同じ地獄鴉です」
「何か粗相を?」
「いいえ。彼は気まぐれで選びました。死体はいつも通りの方法で処分をお願いします」

そう言ってさとりは出口用の通路の方向へ足を向けた

さとりが完全に立ち去ってから、パルスィは通路から顔を出した
「あの地霊殿の主、よく来るの?」
「うん。妹さんと一緒の日もある。ペットやら何やら持ち込んで、殺して帰っていくんだ。場所のレンタル代だけでいいのに、通常の料金を払っていってくれる良いお客さんさ」
「ずいぶんと・・・」
パルスィが何かを言おうとした、丁度その時だった

監獄の入り口で、部下の鬼と何者かが揉めていた

「どうした?」
「勇儀様、この女が先ほどクジで赤を引きまして」
「ほーー。お前さん、運がない」

勇儀は憐れむというよりもむしろ、楽しんでいるように見えた
女はまだ見た目若く、虫の妖怪の類だろうか、透明な羽のようなものを背中に背負っていた
状況のわからないパルスィに勇儀が説明する
「クジというのは、これのことさ。試しに引いてみるといい」
渡された筒を振ってから穴を下に向けた。出てきた棒の先に数字が書かれている
「おめでとう。はいこれ」
書かれた数字の分、勇儀が金貨を差し出した
「一ヶ月に一度、特別ボーナスとしてここで働く遊女全員にこのクジを引かせているんだ、書かれた数字だけ金貨が貰えるということで全員これを楽しみにしている。
 しかしその中に一本だけ数字が書いてなくて、先が赤く塗られただけの棒がある。この女は運悪くそれを引いたのさ」
「当たる確立は?」
「仮に100人ここで働いていたとしたら筒の中の棒は100本。つまり毎月一人、引くことになる」
気の毒なことに、目の前の女はそれを掴んでしまった
引いたら最後。その者は問答無用でココに連れてこられる
「て、店長、この場所はいったい?」
不運な犠牲者は初めて見る店の地下にただ狼狽するしかなかった
「確か、赤を引いた者が出たら真っ先に声を掛けてほしいと言っていた奴がいなかったか?」
少女を無視して部下と話を進める
「はい。確か通常の5倍払うから特例で予約を入れたお客がおります」
「すぐに連絡を入れようか」
「かしこまりました」
指示をだし終えてから勇儀は女をみた
「お前これからここで生活してもらう。ここでの平均寿命はすこぶる短いが、まあそんなことは気にするな」
女の顔がみるみる青ざめていく
「私がいなくなったら誰かが不審に・・・」
「今夜、一人の遊女が娼館を脱走した。どこにでもある話さ」
その後彼女は、獄卒に連れて行かれた









「ここらで一服しようか」
パルスィは勇儀が仕事で使う部屋に招かれた
棚に並べられた高級酒に大理石で出来た床、皮製のソファ。部屋の中央のテーブルの上には異国の果物が並んでいる

「ずいぶんと酷いことをやっているのね」
さっき中断され言いそびれた言葉だった
「そりゃあ、鬼ってのは酒好きで残酷で我侭で、血に餓えている。酒池肉林が大好きな生き物だからね。正直、命を奪う行為は快感さ」
「もしかして監獄の中の女の半分以上が、もともとはここで働いていた遊女なんじゃないの?」
「お、鋭いね。確かにそうだよ」
「こんなことが表沙汰になったら、アンタ只じゃ済まないわよ」
「私を心配してくれるのかい?」

嬉しいねえと、小さく漏らした

「折角だけど、私が裁かれることは無いよ」
「何故?」
「まず、地底と地上はお互いに干渉しあわないと取り決められている」

間欠泉のときのように地上に被害を出さない限り、上が動くことはない

「そしてこの地底。ここで私よりも強い奴はどれくらいいる?」
パルスィは知っている者の顔を何人か思い浮かべたが、該当する人物は出てこなかった
「おまけに今は、この仕事のおかげで金持ちとも太いパイプが出来た。地霊殿のさとりとも良い関係を持っている。私に死なれると困る権力者がこの地底には沢山いる」
それは勇儀の足場が決して揺るがないということだった

「そう言うってことは、パルスィはここがお気に召さない?」
「ええ。あまり楽しいとは感じなかったわね」
他人の不幸に対して、パルスィは心を痛めることもなければ、楽しいと感じるわけでもなかった
「妬むのは専売特許だけれど、他の感情に対しては生憎と希薄なのよ」
「もう何人か死ぬのを見ればきっとパルスィも楽しいと感じるようになるよ。こんな具合に」

果実を一つ取り、パルスィに投げた

「これは?」
「マンゴーっていうヤツさ。海の向こうの果物」
「変なニオイ」
甘い香りに違いなかったが、今までに嗅いだ事の無い部類のものだった
「慣れれば最高に美味だ」
「どうやって食べるの?」
「自由だけどそうだね・・・・・半分に切ってスプーンで掬えばいいんじゃないかな?」
三口ほど食べてパルスィの表情が変わった
「これは中々・・・」
コクコクと何度もその味に頷く
「だろう? 慣れちまえばどうってことはない。大丈夫、パルスィは素質があると思うんだ」









食べ終えて部屋をでると、廊下で控えていた鬼が話しかけてきた

「地上で働く小作人をつれて参りました。空いている部屋につれてきております」
「そうか」
「小作人?」

娼館ではまず聞くことの無い言葉に、パルスィは怪訝な顔をした

「酒蔵を持っているのはさっき話したね? 実は原料の米も自前で作っていてね」

地上で土地を買い、そこを開墾させた

「地上に住む人間に管理を任せている田が一区あるんだ」
その人間は、かつて人里で人傷沙汰を起こして村八分にされた者だった。農家だったということで雇った

「その人間が不正を働いたのさ、だから今からそいつらを処罰する。この場所はそういう時にも役立つ」

勇儀とその下っ端の鬼が部屋に入る。パルスィは先ほどの覗き見部屋でガラス越しにその光景を見ることにした





「お前か、収穫量を記載する帳簿の数値を改竄したのは?」
「違います。濡れ衣でございます。勇儀様には一家全員を拾ってもらったご恩があります、決してそのようなことは」
部屋には小作人の男だけでなく、その一家も連れてこられていた
小作人とその妻、12歳の少女と、まだ10歳にも満たない男の子だった
一家全員が縄で動きを封じられ、服も取り上げられており身を隠すものは無い
豪華な衣装に身を包んだ鬼と裸の貧乏人。圧倒的な差だった
妻もまだ若く美人で、少女は長い艶やかな髪を持ち目は大きくて愛らしい、少年も利発そうで好感の持てる顔立ちをしていた

「お前がやったという調べはついている。これはもう覆らん。鬼は嘘を、卑怯を嫌う。どうなるか覚悟は出来ているな?」
「・・・・・・」
小作人は観念したのか、頭を深くさげた
「私はどんなお怒りもお受けます。ですが子供だけは堪忍してください。この二人は読み書きが出来ません。罪に一切関与しておりません」
それを聞き勇儀は大きく頷いた
「いいだろう。立て、餓鬼ども」
縄を解き子供を立たせる
「お前達二人の命は、ここでは見逃してやる。その代わり身内のケジメは身内で取れ」
そのまま二人を縛っていた縄を持たせた
「私は直接手をくださない、お前たち自身の手で親を絞め殺せ」
壁を指さした。そこに時計がかかっていた
「30分時間をやる。それまでに出来ていなかったらなら全員殺す」
その言葉を残して、勇儀ともう一人の鬼は部屋を出た

勇儀はすぐにパルスィのいる場所までやってきて彼女の隣に座った

「意外ね。子供は助けるなんて」
「ああ、私は子供には寛容だ」
筒を通して、親と子が交わす最後の言葉が入ってくる
「しかしあの男。鬼相手に不正しようだなんて肝が据わっているわね」
「いいや。あの男は無実さ」
「え?」
パルスィは眉を顰めた
「私がデッチ上げたのさ」
「なんのために?」
「さっきも言ったろう。楽しいからさ、理不尽な死を見るのが。この上なく快感なんだよ。戦うのとはまた違った高揚感が湧いてくる」

子の手で処刑される二人の親を、勇儀は双眸を爛々と輝かせて見ていた

家族は相談して父親から殺すことに決めたようだ
娘と息子だけの力では絞め殺すのに足りないのか、縛られた母も口で縄の端をくわえて引くのを手伝った
それでもまだ力が十分じゃないのか、チアエノーゼと失神を何度も繰り返して苦しんだ後、父はようやく息絶えた
時計を見ればあと10分しか時間がなかった
母は急ぎ、自分の首に縄を掛けるように指示する
自分の首は父さんよりも柔いから大丈夫だと子を励ましていた

「いよいよ大詰めだ」

勇儀は帯を解いた。完全に鬼の獣性のスイッチが入ってしまっていた
下着はつけておらず、着物をはだけさせた形の良い乳房を、足をわずかに開き濡れた秘所を露出させた
「すまないがパルスィ。体を鎮めるのを手伝ってくれないかい?」
「嫌よ。勝手に一人で盛ってなさい」
「つれないねぇ。このまま興奮が昂まったら、お前に何をしてしまうか自分でもわからないんだ」
「・・・・・・」
それを聞きパルスィは勇儀の前で屈んだ

「いつもみたいに啄(つい)ばんでくれないか」
「やったげるから。さっさと済ませなさい」
「パルスィの奉仕だ。心配しなくてもきっとすぐに果ててしまうよ」
この二人が触れ合うのは、これまで何度かあった。最後までするということは一度も無いが、先ほど勇儀が言ったように、火照った体を沈めるために
しかし、こんな特異な場所でするのは初めてのことだった








時計が約束の時間を過ぎ、勇儀が部屋に戻る頃には死体が二つ転がっていた
「お前たち、ご苦労だった。今日はここで泊まり、明日地上へ帰るといい」
その言葉を聞き、蓄積されていた肉体的な精神的な疲労が一気に押し寄せてきたのか男の子は気を失った
その子は別の鬼に抱えられて運ばれていった
「別の部屋で休もうか」
少女の方は先ほど二人が果物を食べていた部屋に連れていくことになった


部屋に向かう途中、大きな袋を抱えた鬼と出くわした
「それの中身は?」
「へい、例の赤クジを引いた女のなれの果てでございます」
袋の形から察するに、彼女は原型を留めてはいないようだった
「どんな様子か見ていたか?」
「手足を縛り裸にされて足をおっ広げられ、天井に吊るされた状態から始まりまして、棒で叩くわ、鞭で叩くわ、殴るわ蹴るわで酷なもんでした
 そのあと子宮が飛び出すまで歪な性玩具で膣をほじくられから、体中を刃物で切りつけて、拷問器具の曲がる木板に仰向けで寝かされて、背骨を折られました
 とどめに河童の工場から譲ってもらったプレス機です。あれで煎餅みたいにぺしゃんこにしてから、同じく河童の工場から持ってきた裁断機とやらで何分割にも」
「ああ、それは見物だったろうな。その場にいないのが残念だ」

心底残念そうに勇儀は言う。その話を聞いただけで彼女の目は興奮から真っ赤になっていた









勇儀、パルスィ、小作人の娘
この三人の前に、ここは天界なのかと錯覚してしまうようなご馳走が並んでいる

「パルスィ、今日は楽しんでくれたかな?」
「いいえ」
「そうか。なら次はもっと趣向を凝らさないとな」
パルスィは自分の横に座る女の子を見る
親殺しを強要された少女に食欲など無く、手元のコップの中の水を飲むのが精一杯だった

「なんだ、ぜんぜん食が進んでないじゃないか。これからメインディッシュが来るというのに、前菜すら片付いていないなんて」
「弟が心配なんでしょう。そっとしておいてあげなさいよ」
「弟が心配か・・・・・・そうそう、昔ね。すごい強い鬼がいたんだ」
「 ? 」

何の脈絡も無く、唐突に勇儀は語り出した

「そいつは何匹もの鬼を従えた盗賊の頭領だった。ある日、一国の姫君をさらったんだ。姫をさらわれた国は討伐隊を編成して鬼が住む山へ向かわせた。
 討伐隊は山伏に扮してやって来た。鬼はそいつらを敵かどうか見定めるために、姫の生首を見せてその血肉を振る舞い、出方を窺うことにした。
 連中はそれに悔し涙を流しながら食ったよ。鬼たちはそれを『あまりにも旨い肉だから感動しているのだろう』と勘違いして安心し気を許したんだ
 そして討伐隊から御返しに貰った毒入りの酒を飲まされてあっさりと退治された。まったく間抜けな鬼だよ」
「それは大江山の鬼退治のこと?」
「さあ、どうだろうか。ただね・・・」
突然扉が開き、カートで運ばれてきたものを前に、少女は目を剥いた

「私もそいつの真似事がしたくなったんだ」

カートの上には焼かれた弟の姿があった
たちまち少女は嘔吐し、床に這い蹲る

「これを焼いたのは誰だい? すごいじゃないか。まだ微かに生きている」

痙攣し喉をヒョウヒョウと鳴らす男の子を見て、勇儀は感嘆する

「子供には寛大ではなかったの? あの親との約束は?」
「あの場では殺さないと約束しただけだ。その後にどうするかは勝手だろう」

グリルにされた男の子の目を指でつぶしながら勇儀は言う

「おい餓鬼。いつまでそうしているつもりだい?」
嘔吐してうずくまる姉の髪の毛を掴んで立たせ、弟の前に顔を突き出させる
「おまえもこうなりたいか?」
必死に少女は首を振った
「なら食え。おいしいですと言ってみろ。討伐隊のやつらのように泣いて喜ぶ演技をしろ」
弟の耳を毟りとって目の前の皿においた
考える間もなく、彼女は弟の一部だった物を口に入れて租借した。噛みづらい軟骨だが、火が通っていたおかげでなんとか飲み込めた
「よし、次」
今度は腹の肉だった
それも彼女は無理矢理に胃袋に押し込んだ
「うまいか?」
涙で顔はくしゃくしゃだった。この時、男の子はすでに事切れていた

飲み込んだと思った直後、再び彼女は嘔吐した、胃が空っぽになってもまだ吐く動作をやめなかった
「・・・・・・」
勇儀はそれを見て落胆した。目を閉じて無言で首を振る
「おい。グラスが空だぞ。何か注いでやれ」
部屋の隅で控えていた鬼のウェイターに命じた。オレンジジュースが彼女のグラスに注がれる
それを見届けてから勇儀は自分の席に戻った

「いくらアンタでも、ここまでの無法が許されるのかしら?」
「そうだね。いつか私も制裁を受ける日が来るかもしれない」
「いつか、アンタの手にするその盃に毒が投げ込まれているのかもしれないわね。さっき話した大江山の童子たちのように」
「パルスィの言うとおりさ。でもね」
優しく笑った
「今日、毒を煽るのは私じゃない」

テーブルがガタンと揺れた

音の発信源に目を向けると、少女が胸を押さえて苦しんでいた
「アンタまさか、この子のジュースに?」
「残念だよ。もしもあそこで弟の肉を吐き出さねければ、史実どおり私が毒を飲んでやったのにね」
喉を押さえてのた打ち回る少女を見下す

「さあクソ餓鬼。おまえはどう殺してくれようか? その毒は死に至るまでの時間が長い。まだまだ楽しませてもらうぞ」

頭から度数の高い酒をかけて、燭台の蝋燭の火を近づけると、彼女はたちまち火に包まれた
酒のアルコールはあっと言う間に尽きてしまい、彼女は体の表面を軽く炙られた程度だった
「まだ死ぬなよ。存分に苦しめ」
服が燃えて落ちてむき出しになった少女の胸、成長期で膨らみ始めたそれを握力にものをいわせて抓る。そうすると彼女の体はビクリと跳ねた
「男を知らないで死ぬのは嫌だろう? せっかく可愛い顔で生まれてきたんだ」
部下の鬼の中で一番ペニスが大きな鬼を指名して犯させた。あぶれた鬼が彼女の体を叩き、抓り齧り苛め抜いた。突かれるたび彼女は白い泡を吐いた
獣のように犯される彼女をしり目に、勇儀は椅子を破壊して足から一本の棒を作る
彼女の膣に鬼の精液で満たされてから、鬼たちに彼女を押さえつけさせるよう指示して、股を開かせると菊門に椅子の足をあてがった
「そらっ!」
鬼の怪力で押し込まれたそれは、少女の菊門を破壊し、内蔵を突き破り、心臓に真下から突き刺さった
彼女は目を大きく見開いくと、まったく動かなかった
「この棒がもっと長ければ、頭まで串刺しにできたのにな。なんか消火不良だね」
まだ勇儀の興奮が冷める様子はない

「確か牢の中に性病になって使いものにならなくなった女がいただろ。それを呼んで来い」

スイッチの入った勇儀は次の生贄を欲した。その犠牲者を使いこの火照りを冷まそうと考えた
鬼たちは返事をして、準備のために外に出て行った

「ふ~~」
二人きりになり、勇儀は腰をどさりと落とした

「この子たち。どうするの?」
姉弟の死体を見る
「明日、生ゴミとして出すよ」
「毎日こんなことを?」
「ああそうさ。いつもこんな風に罪の無い者を理不尽に引っ立てては、殺して楽しんでる。でもやっぱりその中でも人間は別格だ」
大きな盃に酒を注いでそれを一気飲みする
「ああ、毒の入っていない酒は旨いね」
かつて人間と鬼の間であった悶着を勇儀は想起し、浸っていた
「そんなに誰かを甚振りたいのなら、悪人でも捕まえて拷問したらいいでしょうに」
「それもいいかもしれない。悪を裁くのは素晴らしい。しかし、それじゃあ興奮しない」

勇儀には勇儀の美学があった。理不尽な死こそが彼女に性交以上の快楽を与えた

「これからもお楽しみは続くよ。もうすぐ商売に使えない女たちがここにやってくる。自分達がどんな目にあうかも知らずにね」
「もういい疲れた。こちらとしてはもう帰りたいわ」
勇儀たち鬼の宴に付き合う気は無かった
「じゃあここに泊まっていきなよ」
無理な引きとめはせず、勇儀は鍵を握らせた

「最上階の角部屋だ。この館で一番良い場所だ、風呂も着替えも食べ物も設備は全部揃っている。扉の近くに部下の鬼がいるから、足りないものがある時はそいつに伝えるといい」

受付の老人を呼び出して、パルスィをエスコートするように命じた

「おやすみなさい」
「ああ、おやすみパルスィ。慣れない場所に連れてこられて疲れたろ? ゆっくり休むといい」

案内された部屋でシャワーを浴びて、髪を乾かし、歯を磨いてすぐに眠りについた









強い視線を感じて目を開けた
「おはよう」
勇儀がベッドの前に置いた椅子に座り、パルスィを眺めていた
「今何時?」
地底の空は色を変える事は無い
「地上では太陽が顔を出す頃さ」
「寝ている私に何かした?」
「最初はそのつもりだった。夜這いをかけて滅茶苦茶にしてやろうと思った、でもお前の穏やかな寝顔を眺めていたら、そんな気は失せてしまったよ」
勇儀は昨日とは違う着物だった

楽しそうに昨夜のことを説明しだす
「性病持ちは全部で五人だった。その体に順番に焼き鏝で番号を捺してやったよ」
勇儀は手の平をパルスィに向けた
「一番は斬首した。二番は首を吊らせた。三番は股裂き」
一人殺すごとに指を倒していく
「四番目は串刺し。五番目は胸を抉って心臓をじか食いしてやった」
平手は握りこぶしに変わっていた
「終わってから部下が一人『病がなんぞ!』と勇んで首の無い女の体にナニを突っ込んで果ててたよ。あいつのモノはもう絶対に使い物にならないだろうね」
よっぽど滑稽だったのか、膝を叩いて思い出し笑いを始めた

「それから避妊に失敗して孕んじまって商売が出来なくなった女を三人集めた」
人間が一人に妖怪が二人の内訳だった
「全員、首に重しを付けてこの館の屋上から突き落としたよ。死体を見に降りてみると全員がお腹を守る姿勢で死んでいたよ」
「あっそう・・・・」
パルスィは相変わらず淡白な返事をした。起き上がり、寝巻きを脱ごうとして気がついた

「私の服は?」
「ああ、洗濯に出したよ。血の臭いがするのは嫌だろう? 代わりにこれを着るといい。プレゼントだ」
勇儀はクローゼットを開けた
彼女が着ているのに負けず劣らずの鮮やかな着物だった
「私には似合わないわ」
「そんなことないさ」
「すぐに売ってしまうわよ?」
「それでもいいさ。売ったお金で好きなことをすると良い」
この衣装は、パルスィのために勇儀が職人を雇い特注で作らせたものだが、それは一切言わなかった

「・・・・・他に着るものも無いし」
渋々それに袖を通す
「うん。思ったとおりよく似合う」
それだけで勇儀は満たされた
「サイズがぴったりなのは気のせいかしら?」
「偶然じゃないかな?」



着替えが終わる頃に、部屋に朝食が運ばれてきた

「ねえ」
「ん?」
「なんで私をここに連れてこようと思ったの?」
「そうだね・・・・・・」
パルスィのその問いに、勇儀はしばらく考え込んだ
「理由はいろいろあるよ。でも一番はやっぱり、私のことを知ってもらいたいってのかな。館の地下で見せたあの残忍な鬼の私もパルスィにはちゃんと見てもらいたかったんだ。いやちょっと違うかな・・・」
また勇儀は言葉を考えはじめる
「パルスィだから、全部を見せられると思ったんだ」
いつになく真剣な面持ちだった
「パルスィだって嫉妬に狂った鬼だ。根っこの部分じゃ私と変わらないと勝手に思っている」
もしかしたら自分に共感してくれたのではないかと期待していた
「悪いけど、こと殺しに関しては特に深い感情を持ち合わせていないわ」
「でも妬ましいから不幸になれと願うのは、嫉妬の一部じゃないのかい?」
「嫉妬は感情、殺しは行動、その二つは決して直結しているわけではないわ。私が司るのは妬みという感情そのもので、その感情によって生じたものまで面倒をみる甲斐性は無いの」
「そうか、残念だ。共通の趣味が持てれば、関係も深まると思ったんだけれど」
パルスィの回答にまるで叱られた子供のような顔になる
「悪いね、色々とつき合わせて。これを食べたら送るよ」
「そうしてくれると助かるわ」
「でもその前に一個やってほしいことがあるんだ」
「 ? 」










再びパルスィは地下に連れてこられた
しかも昨日、無実の罪を着せられた小作人の夫婦が実の子に絞め殺された部屋だった

「こいつをお前さんに殺してもらいたい」

そこには目隠しに耳栓をされた者がいた
「この人・・・」
手に添え木をしている者にパルスィは見覚えがあった
「娼館の従業員」
「昨日パルスィに触れようとして私が腕の骨を砕いてやった野郎さ」
手と足の甲に杭を打たれ、床に無理矢理正座させられていた
「なぜ彼が殺されなければならないの?」
「ここの遊女たちは全員ワケありだ。身請けでもされない限りここを出ることは許されない。しかし、昨日一人の遊女がこの館からいなくなった。遊女の管理はこいつとその部下に一任している」
「その遊女って確か・・・」
昨日、運悪く赤いクジを引いた女の顔が脳裏に過ぎった。きっと死体すらこの世には残っていないだろう
「でもコイツはそのことを知らない。私から職務怠慢だと非難されれば、それを否定する手段を持たない」
「つまり、彼も被害者というわけね」
「悪いけどパルスィに拒否権は無い。15分あげるよ。それまでにこいつを殺せなかったら、私がパルスィを殺す」
壁の時計を指差した。昨日の一家と同じ状態になった
「これでパルスィは相手を殺さなければ自分が死ぬ状況に陥ったわけだ」
「私がコイツを殺すのを見て、ズリネタにでも使う気?」
「うん、よく分かってるじゃないか。夜這いできなくて少々溜まってるんだ。それにパルスィにも道楽で誰かを殺す楽しさに目覚めてくれれば一石二鳥かと思って」

勇儀は壁に持たれて足を投げ出す
「ちなみに誰かを殺したことは?」
「馬鹿にしないで。これもで長く生きてるわ」
「そうかい。じゃあ、スタートだ」
開始の合図と同時に指をしゃぶり唾液で湿らせ、自慰の準備を始めた

「・・・・・・・」
パルスィは天狗をしばらく観察する。背後から勇儀の艶っぽい声が聞こえる
5分ほどで天狗の背後に歩み寄った。長い振袖を捲くる
彼女は素手だった。だから天狗の首に腕を回して、力いっぱい捻った。180°反対側を向いた天狗が事切れた瞬間、勇儀もまた気をやった




「お疲れ様。橋まで送るよ」
部下に駕籠を準備するように指示する
「いらないわ。歩いて帰る」
「そう言わないでくれ。このあたりはご存知の通りあまり治安が良くないんだしさ」
「ならアンタが一緒に来てくればいいでしょう。護衛して頂戴」
「それは良い提案だ」














橋の上から旧都を眺める
その姿を勇儀は、指で作ったフレームで捉えていた
「うん。やっぱり綺麗だ」
「からかわないで頂戴」
「なんでそう卑下するかね?」

勇儀はパルスィと初めて出会った時のことを思い出す

「洞穴近くに住む仲間と酒盛りをした帰り。この橋を渡ろうとしたとき、橋の上から旧都の灯りを眺めるお前さんを見つけたんだ」

洞穴と旧都の狭間。地底にありながら、地底のどこにも属さない場所。そこにたった一人で立ち続ける彼女
「酔いが一気に覚めた。その姿があまりにも美く・・・・魅力的だったから」
常に鬼というコミュニティの中にいたため孤独というものを知らない勇儀の目に、彼女の姿はそう映った
「旧都で楽しくやっている連中がただ妬ましくて睨んでいただけよ。浅ましく醜いだけ」
「それでも、私の目にはそう見えた。旧都の明かりを見下し、見上げるようなその眼差しに私は尊敬に近い感情を抱いた」

自分が持っていないものを持っているから、勇儀は彼女に惹かれたのかもしれない

「また誘うよ。そのときはまた来てくれるかな?」
気持ちに答えてもいいと思える日が来るまで、勇儀はお誘いをずっと続けるつもりだった
「迎えが駕籠じゃないなら考えるわ」
「そいつは手厳しい」
洗うために預かっている服は、乾き次第部下の鬼に送らせることを伝えて、勇儀は踵を返した
パルスィはそれを見送る

(何度来たって無理よ)

妬みとは羨望の別名である

(嫉妬深い私が、何でも持っているはずのアンタを妬ましいと思ったことが無いもの)

むしろ憐れみに似たものを感じる時さえあった

(だから私はアンタに興味が持てない)

その原因に気付くまで、二人の今の関係はまだしばらく続くようだった
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