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木質の偽造ペレット工場

東方の二次創作SSです。いぢめ・グロ注意

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フランドールが盲目に

メインキャラクター:紅魔館

【 story 】
突然、フランドールの目が見えなくなってしまう
フランドールはいつも通り地下室で目を覚ました

「?」

部屋がやけに暗い、そう思った

地下室は普段から暗いが、今は全くと言っていいほど何も見えなかった


本当に何も見えなかった













紅魔館のメイド長十六夜咲夜は、地下室に幽閉されている主人の妹フランドール・スカーレットに食事を運んでいた
本来この役目は他のメイドが行うはずなのだが、最近は皆が怖がってやりたくないと拒否したため、やむをえず咲夜がやっている

「失礼します・・・・」
そう言って地下室の扉を開ける
「咲夜?」
地下室はいつも通りフランドールがいた
「お食事をお持ちしました、ここに置いておきますね」
「ここってどこ?わからないんだけど?」
咲夜は怪訝な顔をした。食事のトレイはフランドールの目の前に置いてある
フランドールはそれに気付かず、周りをキョロキョロ見回す
「妹様の目の前ですが?」
「そうなの?よく『こんな暗いのに』ここまで持って来られたね」
咲夜は不思議に思った
(暗い?地下室はいつも通りの明るさのはずだけれど・・・・・)
最初この子は自分をからかっているのかと思った
だがフランドールはいたって真面目な顔をしている
(まさか・・・・・・・)
「妹様、失礼します」
嫌な予感がして咲夜はフランドールに詰め寄って顔を両手で挟んで固定する
「え?なに?」
わけが分からずフランドールは混乱する
咲夜はフランドールの目を覗き込み、近くにあった蝋燭を火を彼女に目に近づける
普通なら眼球の焦点が火に合うはずである
しかしフランドールの目は火の明かりに何の反応もしなかった


フランドールはいつの間にか失明していた


咲夜はそのことを直ちに自分の主、レミリア・スカーレットに報告した
報告を聞いたレミリアは急いで永遠亭の薬師八意永琳を呼びつけた

永琳の診察でフランドールの失明の原因は視神経が切断していたためだと判明した
その日のうちに紅魔館でフランドールに手術が施された



「フランの目は治ったの?」
たった今、手術が終了し部屋から出てきた永琳にレミリアが尋ねる
「まったく、厄介な患者よ・・・切開した瞬間から傷が閉じ始めるのよ。さすが吸血鬼。やりにくいったらありゃしないわ・・・・・」
悪態をつきながら、手術着から普段着に着替える
後ろから助手の鈴仙が手術道具一式を持って部屋から出てくる
「そう、ご苦労様。感謝するわ、報酬なんだけれど・・・・」
「いらないわ」
だが永琳に断られた

「だって、あの子の目は治っていないもの」
「なんですって?」
予想外の返答に驚く、てっきり手術は成功だと思った
「視神経は元通りに繋げたわ。でも繋いだ瞬間、視神経がずれ始めたのよ・・・・おそらく体が『視神経が離れた状態が正常な状態』だと勘違いして治してしまうのよ」
「なぜ?そんなこと有り得ないわ」
「きっと長い年月をかけて徐々に徐々に視神経がずれていったのでしょうね。外的要因で負傷したわけじゃなから、体は怪我と認識せずに治さなかったのよ」
「じゃあ、あの子、一生このままってこと?」
「それだけじゃないわ」

永琳がさらに追い討ちをかける

「切開して分かったわ、あの子聴覚もいかれ始めてる・・・このままだとあの子ヘレンケラーと同じ状態になるわよ・・・」
レミリアがわずかに動揺したのが永琳にはわかった
「私だってこんな中途半端なところで患者から手を引きたくないわ。治療法は必ず見つけるわ、だからしばらく時間をくれないかしら」
幻想郷で彼女以上の医者はいない
レミリアは永琳に治療法の発見を任せた


そして、その時レミリアは思った。
これは妹を教育するいい機会ではないか、と






次の日の夜
フランドールは盲目の人間が使う白い杖を持ち、その棒で足元を探りながら紅魔館の廊下を歩いていた
飛ぼうと思ったが聴覚にも障害があるため思うように飛べなかったためやめた


昨日、手術が失敗して、自分が失明したままだと知らされ落ち込んだ
その落ち込んだフランドールに姉のレミリアが紅魔館内を自由に出歩いてもかまわないと許可を出した
『ものを破壊する目』が失明し見えなくなったため、館内の物を壊す心配が格段に下がったためなのがその理由だと姉は言った

この時レミリアはフランドールに永琳が治療法を探していることを『あえて』話さなかった


カッカッカと杖で叩く音が廊下に響く
フランドールは杖で足元を慎重に確認しながら広い紅魔館の廊下を歩いていた
「?」
何かが杖の先に当たる、障害物だとわかった。迂回して通ろうとする
「?」
また障害物に当たった。そのとなりにも障害物、またそのとなりにも障害物があるのがわかった
どうやら障害物はバリケードのように横一列に並べられて道を塞いでいるらしい
「邪魔だなあ・・・・」
そう言って自分の前にある障害物を思いっきり蹴り飛ばした
目が見えないからといって力が弱まったわけではない、蹴ったものは粉々に砕けて破片が廊下の向こうまで飛び散ったのがわかった
しかしバランスが上手く取れずよろけた
「よし、進もう」
そう言って一歩踏み出すと
「待ちなさい、フラン」
突然レミリアに呼び止められフランドールはビクリと体が震え、硬直した
どうやら一連の出来事を見られていたらしい
「なに、お姉様?」
なんとか平静を装って返事をする
レミリアは妹の動揺を感じ取り、それを鼻で笑い、話の本題に入る
「あなたが何も壊さないと思ったから館内を出歩くことを許可したのよ?なのに椅子を蹴り壊すなんて、なにごと?」
この時フランドールは自分が今蹴ったものは椅子なのだと初めてわかった
「でも、道いっぱいに広がっていて邪魔だったから・・・・・」
消え入りそうな声で弁解する
「言い訳しないで。そんなものは乗り越えるか横にどけて進みなさい。今度また何か壊したら太陽の下に一分間放り出すわよ」
そう冷たく言い放つとその場から去っていった

普段のフランドールなら間違いなくここでレミリアに飛び掛っている
しかし、今は自分のほうが遥かに分が悪い
そんな相手に挑むほど彼女は無謀では無かった
姉なら本当に自分を太陽の下に放り出すだろう
今の状態で太陽に下に放り出されるのは通常の何十倍の恐怖だった
これからのフランドールはものを壊さずにして進む以外、この紅魔館で生きる道は無いと悟った


ちなみに廊下の椅子は妖精メイド達が置いたものである
普段フランドールに怖い思いをさせられているため、そのささやかな復讐らしい
紅魔館の廊下にはいたるところにその障害物が設置されている
もちろんレミリアはそのことを知っている
知っていてメイド達の嫌がらせを黙認した



レミリアはフランドールを叱ったあとパチュリーのいる図書館にやってきた


「それで、妹様の目は治るの?」
「ええ、そう遠くない未来。あの薬師が治療法を見つけて。その手術であの子の目と耳は完治するわ」
レミリアにはこれから先の出来事が見えていた
「運命を操るっていうのは、本当に便利ね。でも、なぜそのことを教えてあげないの?」
「あの子のためを思ってよ」
「妹様のために・・・・・ですか?」
紅茶を運んできた小悪魔がレミリアに尋ねる
「そうよ、いくら強い力を持っていても目と耳に障害がある、今なら多分あなたでも勝てるわ」
「私が妹様に挑むなんてそんな・・・・」
手を前に突き出して否定する
「今回はあの子を教育する上で絶好の機会なのよ」
「絶好の機会?」
「そうよパチェ。今まであの子は自分より弱いものに対しても全くと言っていいほど容赦しなかった
 今のフランは紅魔館で最も立場が弱い。目が治るまでの間、辛いことばかり経験するでしょうね
 でも力の無い者の身を実際に経験すれば、目が治ってから少しは相手に優しくなれるんじゃないかしら?」
「メイドからの嫌がらせも受けてるそうじゃない?」
「フランには今までのツケが回って来ただけのことよ。だからメイドの嫌がらせについても今回は目を瞑るわ。咲夜にもそう言ってある」
「助けてあげないんですか?」
小悪魔がおずおずと尋ねる
「あの子の態度しだいね。泣いてお願いしたら助けてあげなくも無いわ。あの子最近、私の言う事全然聞かないで少し反抗的だから」
「妹様をいじめて楽しい?」
「いじめてなんかいないは、あの子には成長してほしいだけよ」
少しムッとなって反論した
「それにものを壊さないで生活するのにいい機会なのよ」
もう用件は無いらしく、立ち上がり図書館を出て行った。





レミリアが出て行ったあと





「くくく・・・・・・あはははははははは」
急に小悪魔が腹を抱えて笑い出した
突然のことに驚くパチュリー
「なにっ!?急にどうしたの!?」
突然小悪魔が壊れてしまい驚く
「あははははは・・・・・だってお嬢様が・・・・ククククあははははははははははははははははははは」
「わかるように話しなさい。怒るわよ?」
友人を笑われていることにイラだちを隠しきれず脅すように言う
それが利いたのか、ひとしきり笑い落ち着きを取り戻した小悪魔が口を開く
「失礼しました。だって可笑しくないですか?妹様が弱者の気持ちを理解できないのも、ものを破壊するのも、言う事を聞かないのも
 紅魔館で孤立してるのも。全てお嬢様が妹様を地下室に閉じ込めてから今まで何もしなかったからじゃないですか?
 お嬢様の言い方だとまるで『フランが勝手に悪い子に育った』っていう言い方をするんですよ?
 それで厳しく接するのは愛情だって主張するんですから。もう可笑しくって可笑しくって・・・・・・・フフフ」

再び小悪魔は狂ったように笑い始めた
パチュリーにはいつもと様子が違う小悪魔をただただ不気味に感じて、咎めることが出来なかった
長い時間、図書館に小悪魔の笑い声が響いた



朝、咲夜が朝食の準備をするために厨房に続く廊下を進んでいるとフランドールを見かけた

ちょうどメイドの設置した椅子の列を乗り越えようとしているところだった
平衡感覚が狂っているため、乗り越えられず椅子ごと倒れこむ
その拍子に落とした杖が床に転がる
倒れた痛みを堪えながら、転がった杖を手探りで必死に探す
杖は椅子の反対側に行ってしまったため拾うことができない
そのことに気付かず見当違いな場所をなんども探している

咲夜は拾って手渡したかったが昨日の昼レミリアから『妹に手を貸すな』『メイドの嫌がらせを黙認しろ』という指示を受けたためそれは出来なかった

「ねーーー誰かーーーーー、杖さがすのてつだってーーーーーーーーーーーーー」
フランドールが大声で周囲に助けを求めた
もちろん手を貸すものは居なかった

「ねーーー誰かーーーーー、杖さがすのてつだってーーーーーーーーーーーーー」
先ほどより大きな声で訴える
咲夜は耳を塞ぎながら厨房へのルートを変更した
途中、フランドールの様子を見てクスクス笑っているメイドのグループを咲夜は発見した
それも黙殺するしかなかった




フランドールが視力を失ってさらに数日が経った

その日、紅魔館の門番、紅美鈴は門番の業務の定期報告のため珍しく館内を歩いていた
そのときフランドールの姿を見つけた

美鈴のいる廊下は南側つまり日の光が入る場所である
当然、換気をするための窓がいくつもある
フランドールはその窓と窓の間の壁にへばりついていた
窓からの日光が彼女を閉じ込めるように両側から差し込んでいる
どうやら夜のうちにそこに迷い込んでしまい、日が出てきてその場所から動けなくなってしまったようだ
つまり朝からずっとその場所でじっとしていることになる

助けだそうとフランドールに歩み寄ろうとすると
「待ちなさい」
いつのまにそこに居たのか、咲夜が美鈴を呼び止める
「咲夜さん!」
突然のことに思わず声を上げてしまう
「馬鹿、声が大きい」
フランドールが2人に気付いて顔を上げる
「美鈴?咲夜?・・・地下室までの道が分からないの・・・・教えてくれない」

咲夜が美鈴の服を掴み、小声で言う
「さっさと行くわよ美鈴」
「そんな、いくらなんでも・・・・・・・このまま放っておくなんて・・・・」
「お嬢様の命令よ、それにこれは妹様のためでもあるのよ」
そこで2人は会話を止め、音を立てないようにその場から離れた

自分達の名前を必死に何度も呼ぶ声を振り払いながら進む足取りは、ものすごく重かった



またある日
フランドールは図書館の前にたどり着いた
「ここはどこ?」
「図書館ですよ、フランドール様」
応対したのは小悪魔だった
「お疲れでしょう、紅茶でも飲んでいきませんか?」
「いいの?実はのどがカラカラだったの・・・・」
小悪魔はフランドールを図書館に招き入れた
図書館にはパチュリーと小悪魔、遊びに来た魔理沙がいた
魔理沙もフランドールの事情は聞かされている
小悪魔がフランドールをテーブルまで誘導し紅茶を出す
「どうぞ」
「ありがとう・・・・・・・・・あっ!」
フランドールは誤ってティーカップを倒してしまった
こぼれた紅茶がテーブルの上に広がる
「ごめんなさい・・・・・」
「気にするなフラン、なんなら私のカップ使うか?」
「そうよ、気にしないで。小悪魔、今度はちゃんと取っ手を持たせてあげるなさい」
「かしこまりました、妹様ここを持って下さい」
新しく入れなおした紅茶を今度は、一度カップの取っての部分をフランドールに触らせてから手渡した
「ありがとう」
そういって紅茶を飲もうとする

久しぶりにだれかとお話ができる
それがフランドールには堪らなくうれしかった


だが
「あら?目の見えない子が図書館なんかで、何をしているのかしら?」
ちょうどレミリアがやってきた
その一言で紅茶を飲もうとするフランドールの手がピタリと止まる
「まさか、点字の本でも借りにきたの?殊勝な心がけね。勉強熱心な妹を持ってお姉さんうれしわ」
「帰る、ご馳走様」
「おい!フラン待てよ」
魔理沙が呼び止めるがそのまま杖を持って立ち上がる。慎重に足元を確認しながら図書館をあとにする
結局、紅茶に口をつけることは無かった
レミリアはフランドールとのすれ違いざまに
「フラン、辛かったらいつでも言いなさい。すぐに『助けて』あげるから」
嘲笑するようにそう言った

姉を無視して、ゆっくりとした足取りで、けれども図書館から少しでも離れようと急ぐ

フランドールが居なくなってしばらくの静寂
静寂を破ったのは魔理沙だった
「おい!!レミリア!お前どういうつもりだ!!」
魔理沙がレミリアを睨みつける
このまま弾幕ごっこが始まりそうな雰囲気だった
「言ったでしょう?フランには弱者の気持ちを知る必要があるって」
「あれは言いいすぎだろ!!ただのいじめじゃないか!!」
「あの子は弱ってる時しか話を聞かないのよ。あれぐらいがちょうど良いのよ」
さも当然というようにレミリアは言い放つ
「ああそうかい!」
魔理沙は荷物をまとめ始めた
「不愉快だからもう帰らせてもらう」
「ええそうしてくれると助かるわ。今はフランにとって大事な時期だから部外者にはあまり干渉して欲しくはないの」
「頼まれたって来ないぜ!・・・・・・・・じゃあな!!」
魔理沙は本を借りるのも忘れて箒に跨り廊下の窓から出て行った

姉妹のやり取りを見ていた小悪魔の口もとが大きく吊りあがったのをパチュリーは目撃した
そのあまりの不気味な笑顔は、魔理沙と一緒にレミリアを糾弾するのを忘れてしまうほど邪悪なものだった






さらに数日が経つ
ようやく永琳が紅魔館に訪れた
「見つかったの治療法は?」
「ええ、この方法なら上手くいくはずよ」

永琳の提案する治療法は移植手術だった
フランドールの視神経を全て取り除いて、再生が始まると同時にその部分にレミリアから取り出した視神経を絡ませて無理矢理つなげて同化させるという
吸血鬼同士だから出来るなんとも強引な手段だった。しかもこの方法なら失敗してもお互い再生するので何度でも挑戦できる
同様の方法で聴覚も治せるとのことだ
「姉妹じゃなきゃ移植できないのよ。適合しなければ神経は同化しないから」
「やっぱり私のを移植するのね」
「怖いの?」
「かわいい妹のためよ、しょうがないわ」
「成功する可能性は。適合しなかったリスクを考えても98%ってところね」
「いいえ、永琳。100%よ・・・・手術をすれば確実にあの子は目は元に戻るわ」
目を閉じてレミリアは自信たっぷりに答えた
「運命を操る程度の能力ってやつかしら?なんなら道具は持ってきているあるから今すぐに出来るわよ?」
今すぐできる、つまりフランドールは今すぐ治るということである
少し思案するレミリア
まだフランドールの目を治すのは早いと思った
「悪いけど1週間後にしてもらえないかしら?」
「そっちの都合に任せるわ・・・・・・・・治せる患者をすぐに治療できないのは残念だけど・・・・・・・・」
「そのかわり一回で成功させなさい。失敗したからもう一度なんて嫌よ」

手術は1週間後と決まり、永琳は帰っていった





その日レミリアは夜中にふと目を覚ました
部屋から出てすぐそこにフランドールが横たわり眠っていた
「フラン、起きなさい」
妹の頬を軽く叩く
眠そうな顔でフランドールがムクリと起き上がる
「んーー?お姉様?」
「そうよ。なんで私の部屋の前の廊下であなたが寝ているの?」
「えっ?ここがそうなの?知らなかった」
「どうして地下室で寝ないの?」
「どこにあるか分からない・・・・・・・」
「あれから一度も地下室に帰ってないの?」
「うん」

あれからずっとフランドールは地下室を目指し障害物だらけの館内を彷徨い、疲れたらその場で横になって眠るという生活を送っていた
何度か朝になった時、日光で火傷したそうだ
フランドールの体を見回すと服は所々汚れていた
地下室にしか着替えがないためその服を着たまま今日まで過ごしていた
少し体も臭った



「案内してあげるから来なさい」
「ありがとう、お姉様・・・・・・・」
衛生管理ぐらいはちゃんとしなければならない。そう思い
レミリアはフランドールを背負い、地下室に運ぼうとした

 クー

背負った時、フランドールのお腹が鳴った
「もうずっとご飯食べてない・・・・・・」
「まったく呆れるわ」
「ごめんなさい・・・・・」

地下室の前に行くと、沢山の椅子で厳重にバリケードが作られていた
(確かにこれじゃ、辿りつけないわね・・・・・)
もしかしたらフランドールはここを何度か通ったかもしれない
レミリアは妹が地下室に戻れない理由に納得した
だが飛べば何の問題もなく超えられる障害である
(盲目で飛べなきゃ、さすがにこれはどうしようもないわ・・・・・)
妹を背負い、椅子の山も見下ろしながらそう思った

地下室の扉を開ける
ちゃんとベットメイキングされており
食事もちゃんとあった
毎日咲夜が律儀に運んでいたらしい

レミリアはフランドールを着替えさせる
着替えたフランドールの前に食事のトレイを置く
「食事ここに置いておくから、自分で食べなさい。それくらい出来るでしょう?」
「はい・・・」

そういって部屋を出て行こうとする

突然後ろからクチャクチャと音がした
振り返りフランドールを見ると料理を素手で掴んで食べていた
その様子は『貪る』という言葉がピッタリだった
食器の下のスプーンやフォークに気付けないのか、気付いたが上手く扱えず使用するのを放棄したのかはわからない
もしかしたら空腹でそんなものを使う余裕が無かったのかもしれない
「もっと上品に食べられないの?」
食べるのに必死でその声は届いていなかった

たとえ届いたとしてもフランドールの弱った聴覚では、レミリアが何と言ったか聞き取ることはできない






地下室を出るとレミリアは図書館に向かった

レミリアはパチュリーに手術が決まったことを話した
「そう、それは良かったわね」
「で、それとは別にパチェにお願いしたいことがあるんだけど・・・・」
「私に?」
「正確には小悪魔になんだけど」
「え?私にですか?」
本を整理していた小悪魔が突然の名指しに驚く
「あなたにフランの生活の補助をお願いしたいのよ、食事と着替えのときだけでいいわ。咲夜も美鈴も忙しいから他に頼めるのが居ないのよ」
今日のフランドールの様子を見る限りでは、介護が必要であるのは明らかだった
「私は別に構いませんが」
「そう助かるわ」
「それぐらいならレミィがしてあげてもいいんじゃない?」
パチュリーが横槍を入れる
「フランだけに構ってあげられるほど私は暇じゃないの」
「神社に遊びに行ったり、ガラクタ屋に買い物に行くだけでしょう」
「やけに噛み付くわね、小悪魔を使われるのがそんなに嫌なの?」

パチュリーは、以前レミリアに対する小悪魔の言動を目の当たりにしている
『小悪魔をこの姉妹に関わらせてはいけない』なんとなくそんな気がした

「だいじょうぶですよ、パチュリー様、こちらの仕事もちゃんとこなしますから」
「そうよ、ちょっと借りるだけだから」
結局、2人に押しきられ小悪魔がフランの世話をすることが決定した





その次の日から小悪魔は盲目のフランドールの世話を行った
着替え、食事、頼まれれば館内の散歩の付き添いをした
手術の話はレミリアが直前になって、直接知らせるとのことで、秘密にしておけとのことだ
そのことはフランドールを除く紅魔館全員に伝令された



その日小悪魔は地下室でフランドールの体を濡れたタオルで拭いていた
首、腕、胸、腹、翼、足と拭いていき、新しいタオルを換えて顔を拭こうとする。
顔を拭こうとして、小悪魔の手が止まる

小悪魔の目は、フランドールの失明した目に釘付けになっていた

「どうしたの?」
突然小悪魔の手が止まり、不思議に思い尋ねる
「フランドール様の目があまりにも綺麗なので、つい見とれてしまいました」
小悪魔が正直に告白する
「一分だけ視力回復させてあげますから、どうです『取引』しませんか?」
小悪魔が冗談半分に提案する
「あげないよ」
フランドールは苦笑しながら答える
「それは残念・・・・・・・」
小悪魔も苦笑する


「いいじゃないですか、もう使いものにならないんですし・・・・」
フランドールの耳に聞こえない小さな声でそう呟いた





そして時間は流れ手術の前日の夜になった
明日フランドールの目と耳は治る
この日も小悪魔はフランドールの散歩の付き添いをしていた

フランドールの報復を恐れ、メイドたちは設置した障害物を全て片付けていた
当の被害者はその事実を知らないため仕返しなど頭の隅にも無かった
余談であるが、この数日後、何人かのメイドが白黒に吹き飛ばされたという報告を咲夜は聞いた


おかげで、紅魔館の廊下は快適に歩けるようになった

フランドールは小悪魔のヒジに掴まり、片方の手で持った杖で足元を叩きながら進む
杖の扱いがだんだん板についてきた、小悪魔はそう思った

「ねえ、小悪魔」
「何ですか、フランドール様?」
「私の目ってもうずっとこのままなの?」
このタイミングでその話題が出たのは全くの偶然だった
フランドールは誰かにこのことをずっと訊きたいを思っていた
「お嬢様がいつか必ず治療法を見つけてくれますよ」
今の小悪魔にはそう答えるのが限界だった
「アイツがそんなことするはずない。私の目が潰れていたほうがアイツにとって都合が良いもの・・・・・」
諦めるようにそう言った
「ではご本人に直接聞いてみてはいかかがですか?」
「?」
廊下の先には偶然なのか運命なのかレミリアがいた
2人はレミリアに近づく

「お姉様」
「なにかしら、フラン?」
「その・・・・私の目って・・・・もうずっとこのまま・・・・・・なの?」
勇気を振り絞って訊いてみた
それをレミリアも十分理解していた
知っていたが
「さあ?もお、ずっとそのままなんじゃない?」
全く関心が無い、そんなニュアンスで返事をした
「他に用が無いなら、もう行くわよ。これから神社で宴会なの」
そう言って去っていった


それを聞きフランドールは落胆してその場に両膝をつき崩れ落ちた
実はひそかに期待していた、姉が自分を助けるために動いてくれているのではないかと
それぐらいはまだ自分のことを気にかけてくれているのではないかと
しかし今の言葉で自分は姉にとって何の価値もないのだとわかった




レミリアは思った。手術の話をするのは明日だ、今言う事じゃない
だがそれ以上に、妹を驚かせてみたいという気持ちのほうが強かった
(明日、どんな顔をするか楽しみね・・・・・・・・)
もちろん神社で宴会などその場で言った口からの出任せだ




「あの・・・だいじょうぶですかフランドール様」
落胆するフランドールを見て小悪魔は声をかける
うつむいているため、今どんな表情をしているか小悪魔にはわからない
それでも悲しい顔をしていることは容易に想像できた

しばらく2人の間に沈黙が流れた

「ねえ、小悪魔・・・・『取引』してあげてもいいよ・・・・・・・」
突然フランドールはそう言った


それを聞いた小悪魔は嬉しそうに口元を吊り上げた








レミリアは部屋に戻ろうと廊下を歩く
明日になるのが待ちどおしかった
(あの子の快気祝いのパーティーの準備をしなくちゃ、皆を呼んで盛大にやりたいわね・・・・・)
そんなことを考えていた
すると突然後ろから、殺意を感じた
急いで振り返ると、フランドールの姿が猛スピードでこちらに向かってきた

その手に杖は無く
殺意に満ちた目が自分を見つめている
視力が戻っているとわかった

「あなたどうして!?」
その問いかけを無視してフランドールはレミリアに飛び掛かる
いきなりのことで混乱し反応が遅れ、3発殴られる
だがフランドールはバランス崩し大きくよろけた
そこにすかさず反撃を入れ、フランドールを窓の外まで殴り飛ばした




窓の外に殴り飛ばされてフランドールは自嘲ぎみに笑った
落下中、時間がゆっくり流れていているように感じた

やっぱり、勝てなかった・・・・・・・最後に一泡吹かせてやろうと思ったが、耳は治ってないことをすっかり忘れていた

目の前に久しぶりに見る夜の景色が広がっていた
最後に月を見たのはいつごろだっただろう?ふとそう思った
「今日は満月だったらいいな・・・・・・」
落下しながら首をぐるりと回し月を探す
「あれ?」
今夜は曇っていて月はおろか星さえ隠れて見えなかった
「残念・・・・・・・・・最後にアイツの顔が見られただけでもまあ良かったのかな」
もうすぐ一分が経つ
だんだんと視界がぼやけてきた

フランドールが地面に落下したときにはもう視力は無かった




レミリアが窓から下を覗き込んだ、妹の落下した庭には小悪魔がいて、フランドールとなにやら話しているところだった

「どうでしたか?最後に見た景色は?」
「うん・・・・まあまあだった」
「それは良うございました。では失礼します。痛みは感じないのでご安心を・・・・・」
そう言って小悪魔はフランドールの目に指を入れる
袋に入ったビー玉を取り出すように簡単に両方の眼球を取り出した。その間、血は一滴も出ていなかった
「このままでは瞼が窪んだままなので、義眼を入れておきますね」
「ありがとう」
「いえいえ、これくらいはサービスです・・・・・・・・・・・・ではこれで『取引』完了ですね」

そう。これは『取引』つまり『悪魔との契約』だった
一度結べば破る行動が取れない
レミリアも眼球を取り出している間、動くことができず、ただ傍観するほか無かった


『取引』が終わり、小悪魔はその場で眠ってしまったフランドールを地下室まで運びベットに寝かせた
図書館に戻る途中、レミリアが道を塞いだ
レミリアは咲夜もここに呼ぼうと思ったがこの事態の半分は自分の失態だという負い目があり、呼ぶのは控えた
「やってくれたわね・・・・・小悪魔。まさかあなたの気まぐれで運命を変えられるとは思わなかったわ」
「ここでは音が響きます、どこか場所を変えませんか?」


未来は一つではなく、複数存在する
ただその複数ある中の一つしか選べないということだけ
レミリアが見た未来は『このままフランドールが永琳の手術を受けたら』という条件を前提にただシュミレートしただけの未来視だった
予想外の出来事でその前提が崩れれば当然結果も変わってくる



場所を人通りの少なく、防音の設備がある小会議室に場所を変えた
「明日フランが手術するのは知ってるわよね?」
「誤解しないでください。私はこういう『取引』があると紹介しただけです。申し出たのは妹様です。私は何一つ強制してません」
涼しげに小悪魔は応対する
対するレミリアは一見冷静だが内心では激昂していた
「今の状態で手術をしてもフランの目は治るのかしら?」
まずこれは聞いておきたかった
「いいえ、無理です。『取引』に医療技術が入り込む余地はありません」
視神経を移植しても、眼球が永久に失われたままでは意味は無い
「眼球を元にもどせば十分可能ですが」
「つまり、また『取引』して戻せばいいのでしょう?・・・・・・いいわ欲しいものを言いなさい」
「では紅魔館の当主権限とパチュリー様を私専属の肉奴隷に・・・失礼、愛玩動物にすること。あとそれと・・・・・」
「待ちなさい」
めちゃくちゃな要求に困惑する。いくらなんでもそんな要求を全部通すわけにはいかない

「残念、交渉決裂ですね・・・・・」
そう言うと小悪魔は眼球を2つ取り出し、自分の足元に放る
そして足を上げる
「!!」
レミリアが小悪魔のしようとしていることを理解して眼球に手を伸ばす
小悪魔が眼球に向かって足を落とす
「ぐっ!」
なんとか間に合い、手で眼球を包み込んで守る。しかし小悪魔に手を踏まれる形となり、まるで土下座しているような格好になる
「お嬢様やめて下さい。綺麗な御手が汚れてしまいますよ?」
そう言いながら、容赦無く靴底をぐりぐりと手に押し付ける
レミリアは苦悶の表情を浮かべながら耐える

だが先に小悪魔が折れた

「わかりました、後が怖いので止めておきます」
小悪魔の足がレミリアから離れる
レミリアも手の緊張を解く








グチャ



「えっ?」
手の力が抜けた瞬間を見逃さず、小悪魔がレミリアの手を再び踏みつけた
レミリアの手のひらに眼球の液体が広がる
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
小悪魔の高笑いが響く
「あっ・・・・・ああああああああああ」
レミリアは手に残った感触に震える
「だめじゃないですか、お嬢様?大事なものならしっかり最後まで守ってあげなきゃ?」
勝ち誇ったように小悪魔が言う

だがその一言でレミリアがキレた
「ぐっ!」
今度は小悪魔が苦悶の表情を浮かべる
レミリアが小悪魔の首を掴んでいた
「もうどうでもいいわ・・・・・・あなたが死んで全部償いなさい・・・・・・」
首をギリギリと締め上げる

苦しそうにしながら小悪魔がポケットからあるものを取り出した
それもまた眼球だった
「いいんですか?私が消滅すると、私の所有物である妹様の眼球も消滅しますよ・・・・・・」

どうやら先ほど潰したのは予備の義眼らしい

それを見てレミリアは手を離す
自分は小悪魔にからかわれたらしい
開放された小悪魔が咽ながら、呼吸を整える

「ここまでして一体なにが目的!?」
レミリアは得体のしれない相手に恐怖した
「『これ』なんですよ。これが一番欲しかったんです」
小悪魔はフランドールの眼球を手の中で転がしながら話す
「フランの目が?」
「私も低級ですが曲がりなりにも悪魔ですからね、契約相手の供物は悪魔にとってステータスなんです。お嬢様にはコレの価値がわかっていないようですね」
小悪魔は話を続ける

「495年も生きていながら、地下室で隔離され俗世の穢れを一切知らない、まるで生まれたての赤ん坊の目のような濁り一つ無い純粋な輝き
 ありとあらゆるものの終わりを見つめ破壊する残酷さ。これの前では世界中のどんな宝石でも皆恥じらい身を引いてしまうことでしょう
 それが今私の手の中にある。私にとって余に分不相応なものが目の前にある、そう思うと、持つ手の振るえが止まりません」
小悪魔は自分の世界に入りながらもレミリアに力説する
「私のとってコレを上回る価値があるものはこの紅魔館にありません」
つまりフランドールの目を返すつまりは無い。それが結論だった



「なんてこと・・・・・・・・・」
落胆するレミリアに小悪魔が問いかけた
「妹様の目が元通りになって欲しいですか?」
突然の質問
「あたりまえでしょう。大切な妹よ」
はっきりと言い切る
だが
「ククククク・・・・・・・・・・・・あははははははははははははははははははははははははははは」
再び小悪魔は狂ったように笑い始めた
ワケがわからずに戸惑うレミリア
「さっきから何!!あなた言ってることがめちゃくちゃよ!!」
レミリアのその言葉を聞いて小悪魔の声がさらなに大きくなる
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」


       妹様の目を潰したあなたが今更なにを言っているんですか?




突然真顔になって小悪魔が言った
「どういうこと!?私がフランの目を潰した!?」
身に覚えのないことをいわれ混乱する
確かに小悪魔が妹と『取引』したのは自分のせいでもある
しかし小悪魔の言っていることはどうやらそのことではないらしい
「身に覚えが無いと仰るんですか?」
「当たり前でしょう!!」
小悪魔がレミリアの顔すれすれまで近づく
その目は狂気で踊っていた
「お嬢様はこれまで一度でも『フランが大人しくなればいい』と思ったことありませんか?」
当然ある
「あるから何?」
「じゃあ『フランの能力が無くなってしまえばいい』そう思ったことはありませんか?」
それもある。一度や二度ではない。ずっと昔から思ってきたことだ
「あるわよ、だからなんだって言うの!!」
その言葉に小悪魔は満足してにっこりと微笑む
「ほら、やっぱりお嬢様がやったんじゃないですか」
ますますワケがわからなくなってくる
「いいですか?お嬢様は運命を操ります。先ほどお聞きした妹様に対する願望が、長い年月をかけて少しずつ少しずつ蓄積していったんです
 『フランが大人しくなればいい』『フランの能力が無くなってしまえばいい』という願いをかなえるにはどうすれば一番手っ取り早いと思いますか?」

レミリアは気付いてしまった
背中からは嫌な汗が流れ、顔は見る見る蒼白になっていく

「気づきましたね?ようやく理解してくれましたね?そうです・・・・・・・」


       今回の一件は全てお嬢様の無意識の願いが運命を操り、引き起こしたシナリオなんです



「運命という見えない力が妹様の視神経がズレる体内活動や運動を誘発させ今回の失明を長い時間かけて引き起こしました。
 お嬢様の予知が外れたのも。そして私が眼球を手に入れられたのも。お嬢様が望んだ運命どおり、なるべくしてなったことなんです
 全員がお嬢様の用意した脚本にしたがって動いていたに過ぎません。ただ私はそのことに途中で気づけた。それだけのことです」
悪魔は相手の負の感情を感知するのに長けている、小悪魔はかなり早い段階、レミリアが妹にその感情を抱いていることを知っていた

「違う!!」
これ以上聞きたくないとレミリアは両手で耳を塞ぎ、その場に座り込む
妹を失明させたのは自分自身
その事実を知っても認めることは出来なかった
認めたら全てが終わってしまう気がした


そのレミリアに小悪魔が優しく声をかける
「大丈夫です、安心して下さい私は別にこのことを皆様にふれ回り、お嬢様を貶めようという考えはこれっぽちもありません」
「え?」
意外な言葉に思わず顔を上げ、話を聞いてしまった
「私はお嬢様の味方です」
それは悪魔の囁き
「このまま全てを見届ける。それだけで良いんです。妹様が永久に光を明してしまったのは多数の不幸が重なって起きた悲劇
 誰にもどうすることはできなかった。それに眼球を失ったのを知っているのも私たちだけです
 妹様はもうじき耳も完全に聞こえなくなり、口もろくにきけなくなるでしょう。だからお嬢様を責める方はだれもいません。」
「・・・・・・・・・」
レミリアは小悪魔の言う事を黙って聞いていた、それも良いんじゃないかと一瞬思ってしまった
「もしかしたら、妹様は今夜中に亡くなるかもしれませんね・・・・・・」
その一言でレミリアは我に返る
「明日手術のをするために永遠亭のお医者様がいらっしゃいますよね。そうなれば全てがばれてしまいます。けれど
 この出来事はお嬢様の都合の良いように進んでいきます。そうなると妹様が今夜中に死んで手術が出来なくなった方が望ましい」
「なんですって!!」

フランドールが死ぬ、その未来が頭に浮かび慌てて消し去った
「馬鹿なこと言わないで!フランが死ぬ?そんなこと望んでないわよ!」
「本当にそうですか?」
「無いに決まってるでしょう!!」
「あははははははははははははははははははははははははははははは」
「さっきからなに!!私がフランのことを気遣っているのがそんなに可笑しいの!?」

レミリアは『自分がフランドールの事を大事に思っている』という内容のことを話す度に小悪魔が突然必ず笑い出すということに気が付いた

「あなたは本当に愛してるんですか?妹に浮浪者の真似をさせるのがあなたの愛情ですか?」
「うっ・・・・・」
最近の妹の生活スタイルについて言っていることがわかる
今思えば確かにあれはやりすぎたとレミリア自身反省している

「あなたの妹様に向ける愛情はいつも、歪んでいるんです。あなたがいくら納得のある理由を話しても、その行いはどこか間違っている
 地下室に閉じ込め一人ぼっちにしただけで今日まで何もしなかった。全てを知る機会を全て奪っておきながら
 あなたは妹様に常識を要求する。今回もすぐに妹様は治せたのにあえて手術を延期した
 普段から妹様に関わることを極力避けておいて。それで大切にしているなんておかしくないですか?」

レミリアには言い返すことができなかった
「勘違いしないで下さい、私はあなたを責めているのではありません」
「?」
「あなた達姉妹は本当におもしろい。お互いの愛情は正しく伝わらず誤解ばかりを生むのに、負の感情だけは正確に伝わる
 あなたの周りに皆が集まっているとき、妹様は孤独に震えている。
 あなたが地上で好き勝手遊んでいるとき、妹様は地下室に閉じ込められ何もできないでいる
 あなたが笑っているとき、きっと妹様は泣いているのでしょう?
 まるで質量保存の法則のように、片方がプラスならもう片方がマイナス
 光と影のように全く正反対の人生
 そんなのが500年近くも続いている。本当に興味深い。きっと生まれた順番が逆なら今ごろは逆の立場になっていたのでしょう・・・・」
楽しそうに話す小悪魔


「もう一度聞きます、妹様を愛してしますか?よく考えたら死んでくれれば自分は幸せになれる、そう思っていませんか?」
小馬鹿にしたように尋ねる
「ふざけるな!!そんなのはお前の勝手な思い込みだ!!私はフランも幸せを願っている!!あの子のためならなんだってしてやる!!」
はっきりと大声で言い放つ
小悪魔はそれを聞いて嬉しそうにうなずく


   では『取引』しましょうか?あなたの片目を妹様にお譲りしましょう。もう片方の目は契約の手数料として私が頂きます

   それで魔力の半分を私に支払っていただけたら『取引』は成立です

   何を驚いているんですか?

   説明したじゃありませんか? 
   
   姉妹のどちらかが幸せになるには、どちらかが不幸にならなければいけないと・・・・・・・・・・




































手術から1週間が経った
手術は一応成功した


今、夜の紅魔館の庭にフランドールはいる
隣には魔理沙がいた
館内を出歩く許可はまだ継続中で、だれも彼女を地下室に戻れとは言わなかった



魔理沙が複雑な表情でフランドールを見つめた
「もう・・・・慣れたか?」
「うん、今は飛んでくる弾だって、スイスイかわせるよ。距離感もばっちりわかるよ」
「そりゃすごい」

曇っていた魔理沙の顔がそれを聞き晴れた





「でしょ?目が見えなくても音と空気の流れで結構わかるんだよ」


そう、手術が成功したのは耳だけだった
目はもう取り返しがつかない事態まで進行していたらしく、手遅れだった

しかし耳が治った次の日から、目以外の器官が驚異的な発達をはじめた
今では音を聞くだけで、形、重さ、大きさのその全てがわかってしまう
音さえ聞こえれば、壁の向こう側の情景が映像となって頭の中に浮かぶ
魔理沙の表情だってはっきりとわかるほどに
生活に全く支障は無い

美鈴と組み手をしても圧勝だった
吸血鬼の適応能力が彼女をそうさせた


「魔理沙、今日って満月?」
「ああ、まん丸のお月さんだ」
「見たかったなー」
「もう少し待ってろ、今パチュリーとお前の目が見える魔法の義眼の開発中だ」

魔理沙とパチュリーはフランドールの目が見える方法を研究中らしい
もう実験段階まで進んでいて、遅くても来月には完成するとのこと

それがフランドールは楽しみにしていた


















レミリアは廊下の窓からフランドールと魔理沙を見てた
「たくましいですね、妹様は・・・・・・」
後ろから小悪魔が声をかける
「ええ、そうね・・・・・・」
「これもお嬢様の運命どおりですか?」
「違うはフランの実力よ、あの子が強かっただけ」
「そうですか」

小悪魔に『取引』を持ち出された時
レミリアはそれに応じることが出来なかった
両目を失い、魔力も半分になってしまうのだ、そんな無茶苦茶な要求を飲めるわけがなかった
運命操作が効いたのか、妹はちゃんと生きていた、永琳にも義眼だとバレず手術の失敗も勝手な理由で納得して、深くは追求せず帰っていった
不審に思われることは一度も無かった



「その分、あの子の力になるつもりよ」
「そうしてあげてください」

小悪魔が豹変したのはその時だけで、この一週間はおとなしいものだった

「今パチェたちが作っている魔法の義眼は上手くいくの?」
「ええ、医療では無理でも、魔術なら『取引』に介入できるので、完成したら見えるようになるはずです」
「良かった」
それを聞きレミリアは胸を撫で下ろした



「なに、安心してるんですか?」
「えっ?」
小悪魔の方を見ると、『あの時』の表情の彼女がいた
レミリアは訊かずにはいられなかった
「何が安心できないと言うの?」
「あなたの眼球は、わたしの『取引』リストに入っています。あの時、契約に応じず保留にしたからです
 誰かが私に魔力の半分を支払えば、あなたの目の片方はその方に、もう一つは私に譲渡されます」
「なによそれ!!知らないわよ!!」
「私を殺さないほうが賢明ですよ?コレを知っているのは私とあなただけなのですから」


踵を返し、レミリアから離れていった
「妹が幸せになれば、姉が不幸になる・・・・・・まさに運命どおりですね」


取り残されたレミリアは恐怖に震えていた







  ダレカ ワタシ ト 『トリヒキ』 シマセンカ? マリョク ノ ハンブン ヲ ハラウ ダケデ 
 
              ミライ ノ ミエル フシギナ メ ガ ヒトツ テニハイリマス

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