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木質の偽造ペレット工場

東方の二次創作SSです。いぢめ・グロ注意

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ワールドエンド ネクスト

メインキャラクター:妹紅 小町

【STORY】
世界が滅亡しました
『人間は忘却する。どれだけ記憶しようと、時間が経てばそれらは色あせ、二度と思い出せない』








どこまでも広がる荒野
「最近、上白沢慧音っていう名前の教師と一緒にいた頃を夢で見るの」
オレンジ色の土の上に寝転がり曇天を眺めながら、藤原妹紅はそう呟いた
「誰だいそれ?」
妹紅の独り言に付き合うのは小野塚小町。彼女もオレンジ色の土の上に胡坐をかき曇天の空を見上げていた
「顔はわからない。夢の中の慧音はいつも逆光が射していて見えないの。でも、その声だけはとても鮮明に聞こえてくる」
「そうか。じゃあお前さんにとって慧音ってのは、あたいにとっての四季様みたいなもんか」

小町は目を細めて、雲の色を窺う

「こりゃあ、何か降って来るね」
「雪かな、雨かな? 小町はどっちだと思う?」
「死神お姉さんの天気予報~♪」
立ち上がり、足元の小石でも蹴るような動作で、鼻緒のついた履物を飛ばした
カランコロンと履物が転がり、側面に倒れて止まった

「本日は雨、所によっては槍が降るでしょう~。みなさん、傘の準備をお忘れなく~♪」
「もう何が降ってきても驚かないよ。この前はボーリング玉よりも大きな雹だったし」
「まあ何が降ろうがあたいには関係ないけどね」
「小町の体は卑怯だ」

飛ばした履物を小町が拾おうとしたその時、曇りだった天気に変化が現れた

「これは・・・・雪?」
それは触れると冷たかった
「でも真っ黒だね」
黒豆のような色と大きさの雪が空から舞い降りてきた
「長い時間過ごしてきたけど、こんな色した雪は初めて見るわ」
あっという間に妹紅の服を黒く染めていく
しかし小町の体に雪が落ちても、その身に雪が触れることはなく、通過してそのまま地面に落ちた

「触れてわかった。この雪は浴び続けるとまずい」
妹紅は顔をしかめた
「やっぱり? 死神の勘で、なんかヤバイ気がしたんだよ」
「じゃあ教えてよ。火を焚いて防ぐことだって出来たのに」
「嫌だね。あたいはお前さんが死ぬのを待つ身なんだから、そんな助言するわけないだろう」
「この薄じょ…ぉ」

言い合いになる直前、妹紅はその場で膝をつき、胸を押さえた

「ヒュー、ヒュー、ァー」

肺の機能が徐々に低下して、呼吸が困難になる

「さー、今日こそ仕事を完遂するぞ」

うつ伏せに倒れる瀕死の妹紅の傍に立ち、鎌を担いでいつでも振り下ろせるように構える
妹紅の魂を刈り取るため、彼女が息絶るその瞬間を見逃さないように凝視する

「ハー、ぅぅ、カ・・・・・・・・・・ぁ」

それからすぐに妹紅は絶命した。しかし小町は残念そうな表情を浮かべ、鎌を下ろした

「やっぱり今回も無理か」

黒い雪はどんどん積もり、妹紅の体を徐々に埋めていった







『だが勘違いしないで欲しい。忘却すること自体は決して悪ではない。嫌なこと・辛いことをいつまでも鮮明に覚えていたら人間は前に進めないのだから』







「・・・・・・・・・けーね?」
オレンジ色の荒野の上で妹紅は目を覚ました
「おはよーさん。いや、この場合ハッピーバースデーの方がいいかな? 何にせよ超久しぶり」
上半身を起こした妹紅の隣には、コールタールを被ったかのような真っ黒な粘液に覆われた自分の死体が転がっていた
「リザレクションってのは便利だね。死んでも安全な場所で復活する」
今回の場合、世界中が黒い雪に覆われていたため。雪が完全に溶けきり、安全な環境になった瞬間に新しい体が死体のすぐ隣で形成された
「ほら。抜け殻を埋めてあげな」
足元を指差した
「そうだね」
妹紅は穴を掘り、そこに自分の死体を靴のつま先で蹴って落とした
「おいおい。ゴルフじゃないんだ。自分の死体とはいえ丁重に扱ったらどうだい?」
「こんな汚染された死体に直に触れたら、また死んじゃうじゃない」
「そしたらリザレクションしたらいいだろう。で、死体の服でロープでも使って引っ張りゃいい」
「この穴が二人入るほど広かったら考えてたわ」

死体に土を被せて土葬し、二人は手を合わせる
目をつむりつつ妹紅は小町に話しかけた

「私はどれくらいの時間死んでた?」
「お前さんが死んでる間に、徒歩で世界を1000周以上はしたよ。距離を一切操らずに」
「できたら具体的な日数が知りたいのだけど」
「わかんないね。あの黒い雪以降、空に分厚い雲がずっと出来てたから、日数が数えられない。というか妹紅が死んでる間、世界中が北極だった」

その途方も無い時間を小町は一人で過ごしていた

「何か変わったことはあった?」
「特には。あるとしたら長い長い氷河期が今やっと終わったことくらいかね」

手を合わせるのをやめ、二人はどこまでも広がる荒野を歩き出した
しばらく歩くと、真っ黒な塊を見つけた
「これも私の死体かな?」
「それ以外に何がある?」
「良くもまあこんな長い時間、形を保っていたものね」
「しょうがないさ。死体を分解する微生物なんて存在してないし、風も吹かずお天道様だってず~~~と出てなかったんだから」

見かけた死体は穴を掘って埋めることにした
「あ、そだ」
「ん?」
穴に死体を蹴り入れようとした妹紅は、足を挙げた瞬間、何かを閃いたのか小町を見た
「小町の距離を操る能力でなんとかならない?」
「そういえば・・・・・・・えいっ!」

小町は死体と穴の距離を一気に短くした。死体は穴のすぐ手前で止まった

「あれ? 落ちないの?」
「そういえば、あたいの能力は100mを1mにすることは出来ても、100mを0mにすることは出来ないんだった。久しぶりに使うから忘れてたよ」
「なんだ結局最後は手動か」

つま先でちょこんと蹴って落とす。ゴロンと転がり、死体は穴に納まった

「今頃、世界中にある私の死体は全部こうなってるのかな?」
「埋めて回る?」
「嫌よ面倒くさい」
「じゃあ、さっさと永遠の眠りにつきなよ。あたいもお役御免できる」
「それが出来たら苦労しないわ」

こうして数億年ぶりに、二人の旅は再開した








『だから私は忘却を肯定する。授業の内容を忘れてテストで酷い点数を取ってもまあ許容しよう。しかし、決して忘れていけないことがある。それが“過去の過ち”だ』









夜。荒野の真ん中で二人は火を起こして野宿していた
指先に火を灯す妹紅は、その火を見つめながら自分の記憶を反芻していた
長い時間死んでいたため、脳の作動状況を確認しているのだ

そして地球がこうなってしまった原因を思い起こす

「しかし人間はすごいよ」
「いや全く」
妹紅が感慨深くそう言うと、小町も同意した
お互いの記憶を確認するため、今どうして自分達がここにいるのかを忘れないようにするために、二人は会話をする
長い時間を経て二人が再開した場合、この会話をするのが一種のルールのようになっていた

「モノの一瞬で大地を壊し、自然を死なせ、季節を殺し、星を屠った。私たち死神にゃあ、到底マネ出来ないね」
「それで自分たちまで殺しちまったんだから世話ないわ」
「ははっ。違いない」
「ついでに蓬莱人も殺してくれやあ良かったのに」

人類の文明は飛躍的な進歩を遂げた
しかし、そのために解決しなければならない問題があった。それがエネルギー資源の枯渇である
進歩した文明のエネルギー使用量が、原子力・化石燃料・自然エネルギーのすべてを活用しきったとしても、賄えなくなってしまっていた
人々は核の力よりも膨大で、自然エネルギーのように循環して永久に利用できるエネルギーを求めた
迫り来るタイムリミットを前に、人類は死に物狂いで研究に没頭した

そして莫大な人員と資源、金と犠牲の果てに研究は成功した
新たに生み出された究極のエネルギーに人々は歓喜する。そのエネルギーが人の手に負えないものだということも知らずに

終わりは一瞬だった
そのエネルギーを実用すべく容器から出した瞬間、押し込められていた膨大な力が爆発した

放出された熱は地球の表面だけに留まらず、地球の核にまで達していた
この金属は耐久性が高いだとか、この合成樹脂は熱に強いだとか、そんなのを気にするレベルの熱ではない
海の水が一瞬で蒸発し、山は消し飛び隆起の無い綺麗な平地になった
最終的に地球の表面には何も残らなかった

「あの世は一斉に流れ込んできた死者の魂によってパンクしちまった。ただでさえ死後の世界は狭いんだ、そこにあれだけの量の魂が流れてきたらそうなるしかない」
それにより輪廻転生そのものが消滅した
「じゃあ、どうして小町だけ?」
あの世はもう存在していない。だが小町だけが生き残っていた
小町の姿は半透明で、この世界のものから何の干渉も受けないようになっている

原因はいまだにわからないが、その件について、小町はいつもこう話す

「多分、サボッてたからか? だから四季様が『小町は死神の職務を全うするまで消滅してはいけません。それがあなたに出来る善行です』って理由で生かされたんだよきっと」
「ふーん」
それが真実なのか、彼女の都合の良い妄想なのかはわからない
だが小町は、それが四季映姫の言いつけだと信じて疑わなかった
だからこの職務を全うするため、蓬莱人の妹紅が完全な死を迎える瞬間を待っている
そして妹紅が死ねば、自分も死ねるだろうと期待していた
小町はいい加減に死にたかった

ちなみに輝夜と永琳。この月の民の二人は、術と能力を使い地球を捨ててどこかへ行ってしまった
そんな人物がいたということすら妹紅はもう覚えていなかった







『人間はこれまで悲惨な事件・事故をたくさん引き起こした。一度起きた悲劇を忘れてしまっては、また同じ悲劇が起きてしまう』






野宿して目覚めた次の日の朝
「あー、やっぱり。凍死しちゃってたか」
自分の隣に死体があるのを見て、溜息をついた
「どうする? 埋める?」
小町は鎌の柄を持ち、畑を耕す動作をする
「いや、このままで良い」
死体の手を組み、空いていた目を閉じさせて二人はその場を後にした
「しかし、随分とたくさんばら撒いたね」
「私の死体のこと?」
現在の地球はまだ人間が生きていける環境ではない
一日に一度のペースで妹紅はリザレクションをする
「いっそ死体を積み上げて家でも作るかい? ちょっとはマシになるよ」
「絶対に嫌」
天候に恵まれ、凍死や熱中症にならない日が続いても、結局は餓死してしまう。問題は気候だけではなかった




今日も蓬莱人と死神は終わってしまった世界を巡る
どこまで行っても砂とオレンジ色の土しかない荒野
地面が500℃に達する時期が三億年続いた
次に温かくも寒くも無い時期が二億年続いた
そして大地が凍てつく氷河期が三億年続いた
その次は温かくも寒くも無い時期が二億年続いた
妹紅が死に続ける期間、小町はたった一人で何も無い世界を回った
妹紅が生きていける環境になると、職務を全うするために一緒に行動した



そして今回、4度目の氷河期を二人は迎えた






「おはよーさん。いや、この場合ハッピーバースデーの方がいいかな? 何にせよ超久しぶり」
氷が溶けて、氷付けになっていた妹紅は三億年ぶりのリザレクションをした
目覚めた妹紅が最初に見たのは、夕日をバックに手を振る死神だった
氷像になってしまった死体を埋葬して、小町に尋ねる
「どれくらい私は死んでた?」
「過去にあった氷河期と同じくらいの期間かな」
「それは退屈だったでしょう」
「今回はそうでも無いよ」
「どういう意・・・」
屈託の無い笑みで空を指さした

「え、あ?」

言葉が出なかった。夜空に散りばめられた輝きを見て思考が止まった

「綺麗だろ? ある日突然、見えるようになったんだ」

その時から小町は夜が来るのが待ち遠しくなったと話した。何千年見ていても、飽きることはないだろうと豪語した

大の字になって、二人は空を眺める

「今日ほど、生き返って良かったと感じたことはないわ」
見た目相応の少女のように、瞳を輝かせる。長い長い時間を経て訪れた変化を妹紅は歓迎した

新しいものを得て、二人の旅がまた始まった

「やっぱり、どこまでいっても土しかないね」
「あとたまに妹紅の死体。カリッカリになったやつ」
相変わらず、妹紅は一日一回のペースで死に続けた
微生物のいないため、風化以外の方法で死体が消えることはない。死体は何年も何十年もその場に留まり続けた

「いつか、妹紅の死体で地球が覆いつくされたりして」
「よしてよ気持ち悪い」

そんなとき、二人の足元が揺れた

「うおおっっと!?」
「な、なに!?」

大きな揺れだったが、すぐにおさまった

「今のって地震? 私が死んでる間に何度かあったの?」
「い、いや。あんなの初めてだ」

それから旅の間、二人は大きな地震を何度も体験することになる








『自分達の過ちを二度と繰り返さないために、子々孫々語り継ぐ。それが積み重なったものが歴史だと私は考える』








「なにここ?」
「今まで、どこに行っても妹紅の胸みたいにまっ平らな更地しかなかったのに」
小町の皮肉が耳に入らないほど妹紅は衝撃を受けていた。頭の片隅に残った記憶を引っ張り出して、それに該当する言葉を捜す
「み、みずみ? ・・・・いずみ? みずたまみ?」
「もしかして湖かい?」
「そうそれ!!」

度重なる地震による地形の変化で、大地に大きな窪みが出来ていた。そこに水が溜まっている

「すごい、水なんて全部地面が吸っていたのに」

妹紅は喉を鳴らした。満足な量の水を口にしたのは、世界が滅亡した日から一度も無かった
全速力で駆け下りて、湖の中に服を着たまま飛び込む
その姿を微笑ましく小町は眺める
「おやおや、あんなにハシャいじゃっ・・・」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「な、何だ?」

湖に飛び込んだ妹紅は陸に上がり、水面を指さした

「あ、あれ! 見てアレ!!」
小町が妹紅に駆け寄り、悲鳴の原因を確認する
「なんだ妹紅の死体じゃないか」
水面に死体が浮かんでいた。昔、死体を放置した場所にたまたま湖が出来ていたようだ

「確かに驚くのも無理は無い」
水死体だけあって、その姿はおぞましい
「違う! よく見てよ!」

水を吸ってブヨブヨに膨らむ死体を崩さないように抱えて、小町の前まで来る
妹紅の死体をまじまじと見て、小町は妹紅の言いたかったことを理解する
「腐敗してる?」
妹紅は無言で頷いた
微生物が分解しなければ、死体はこんな風にならない
「・・・・・・・・・」
この時、妹紅は見落としていた。小町の表情が少しだけおかしかったことに



この日は湖の近くで寝ることにした
タイミング良く、湖の近くで別のミイラ化した死体を見つけたので、それを燃料にして暖を取っていた
火を挟んで二人は向かい合う
「微生物が復活したわ」
「ああ」
明るい妹紅とは対照的に、小町はどこか浮かない顔をしていた
「地震がもっと起きたら大きな断層が出来て、そこに水が溜り海が出来る。海が出来たら気流が発生する、雷とかも起きるようになる」
「そうだね」
「微生物がいるってことは、そのうち植物も現れるようになる。地球は死んでなんかいなかった、また最初からやり直そうとしてる」
「・・・・」
「どうしたの小町?」
体操座りをして物憂き気な目で火を見つめる小町にようやく妹紅は気付いた
「確かに微生物が生まれたことは間違いない。かつて消失した死後の世界が再生を始めてる。その証拠に死神の感覚が戻りつつある。あたいの体が死神に戻ろうとしている」
その言い回しに、妹紅は違和感を覚えた
「まるで今まで死神じゃなかったみたいに聞こえるわ」
「ああ、そのとおりだよ。微生物の存在を認識した瞬間、あたいは理解した。いや、思い出したと言ったほうがいいかな」

腐敗した死体を見た時、全てを思い出した小町は告白を始めた

「世界が滅亡したあの時、あたいは防衛本能で咄嗟に能力を使い『熱と自分の距離』を無限に近い距離まで遠ざけたんだ。それでも自分に迫る死を一瞬だけ遅らせたに過ぎなかったけど」
しかし、その一瞬が生死を分けた
「私よりも先に、あの世が消失しちまった。その瞬間、私は死神じゃなくなった。いや、正確には“死神にも生物にも属さない存在”になってしまったんだ」

だからどれだけその身が大災害に晒されようと死ぬことは無かった。小町の体は世界の理から外れた存在になっていた
そうなってしまっていたことを、長い歳月の中で忘れていた

「あの世が復活することで私は死神に戻ることが出来る。良かった、願いが叶う」
「願い? 蓬莱人を殺すこと?」
小町の願いといったら真っ先にそれが思い浮かび、慌てて身構えた
けれど、彼女は手をパタパタと振り否定した
「違う違う。蓬莱人を殺すってのは手段であって目的じゃない」
「じゃあ、何がしたいの?」
「死ぬことさ。今の状態なら霊体から生身になることができる。そうしたら一日で死ねる」
「どうして?」
小町は死ぬことを密かに望んでいたのを知らないわけではない、しかしこの状況であえて死を選ぶのが理解出来なかった
「なぜ死ぬ必要があるの? もう地球は息を吹き返した。きっとこれから恐竜が生まれて、原始人が出てきて、進化し私たちが滅んだ文明と同じ位置まで歩むわ」
退屈な時間は続くだろうが希望が見えた
「だからもう終わりにしたいんだ。妹紅の言う通り、復活した人類が当時の文明に達するさ。でもきっとまた人間は同じ過ちを繰り返す。気が遠くなるほど待ったのに、その先にあるのは結局終焉だ
 妹紅は数億年、死ぬという形で眠ることが出来るからいいさ。でもあたいはその間また一人ぼっちだ。変化の無い世界は苦痛でしかない」
生きることは、もはや小町にとって拷問だった
「・・・・・・」
自分が死んでいる間、小町がどんな思いでその莫大な時間を過ごしたか、想像したことなど何百回とある
だが、もともと仲間だとか友人だとか、二人はそんな間柄ではなかった。だから訊かなかった
「未来の人類もそうなるとは限らないわ」
「いいや、なる。そしてまた地球がリセットされて一からやり直し。これがこの地球の輪廻だ。過ちは繰り返される」


その言葉を聞いた瞬間。妹紅の胸にかつての、もう名前しか思い出せない友人の言葉が蘇った


『人間は忘却する。どれだけ記憶しようと、時間が経てばそれらは色あせ、二度と思い出せない』

『だが勘違いしないで欲しい。忘却すること自体は決して悪ではない。嫌なこと・辛いことをいつまでも鮮明に覚えていたら人間は前に進めないのだから』

『だから私は忘却を肯定する。授業の内容を忘れてテストで酷い点数を取ってもまあ許容しよう。しかし、決して忘れていけないことがある。それが“過去の過ち”だ』

『人間はこれまで悲惨な事件・事故をたくさん引き起こした。一度起きた悲劇を忘れてしまっては、また同じ悲劇が起きてしまう』

『自分達の過ちを二度と繰り返さないために、子々孫々語り継ぐ。それが積み重なったものが歴史だと私は考える』


「ならその歴史を私が伝えれば良い。あんな悲劇を二度と繰り返さないために。未来まで生きて伝える」

決意ある目で小町を見る。その目に気圧されたのか、小町は体育座りの姿勢から仰向けに倒れた

「疲れた、もう寝る」

それ以降、小町はこの日一言も言葉を発することは無かった






『人間の命は妖怪に比べてずっと短い。だから歴史を記録し、語り継いでいく必要があるんだ。私はこのハクタクの力を使い、その役割を担いたい』




かつて友人に「どうして寺子屋で歴史の教師なんてやっているの?」と尋ねた時に返って来た回答。その結びの言葉がこれだった




翌朝。妹紅は頭に軽い頭痛を感じながら起床した
(ずっと昔の出来事を夢で見るなんて、なんかババ臭いなあ。昨日、小町にあんなことを言ったからか?)
生きたまま次の日を迎えたのは久しぶりだった
しばらくして小町が起きた。小町は昨夜の事など無かったかのように、普段どおりに接してきたので妹紅はそれに合わせた

軽い挨拶の後、今後の方針について話し合った

「それで、妹紅はこれからどうするのさ?」
「決まってる。微生物を育てるために、世界に栄養を配るのよ」
小町に背中を向けて湖のほうを見た
「それってさ」
「そうよ。私の死体を世界中にばら撒く。渡り歩いた先で死んでリザレクション、それを続ける」
「うへぇ・・・」
小町はあからさまに呆れた顔をしているだろうと、その声色から十分に察することが出来た
「地球史で植物が出てくるのが何十億年先か知ってるかい?」
「構わない。時間はどうせ掃いて捨てるほどあるんだし」
目的意識を持った妹紅の辞書に、萎えるという言葉は無かった
「だから小町も手伝ってよ。私一人じゃ手に余る」
「そういうのは自分一人でやんな。忘れたのかい? あたいは本来、サボり体質なんだよ」
「つれないわね」
「そう言いなさんな、こっちは気が遠くなるほどの昔から瞬きもしないで歩いてきたんだ」
小町は一歩前に出て妹紅の背後に立つ
「だから少しくらい休憩してもいいだろう?」
「再生した地球を見たいとは思わない?」
「確かに、見たい気持ちがあるのは事実だ。でもね・・・」
「 ? 」

「その世界に四季様は居ないんだよ」

振り向くと、そこに小町の姿は無かった
代わりに一迅の風が妹紅の周りを吹き抜けた

「そっか。ならしょうがないね」

妹紅の顔に悲しみの色は無かった。一度だけ大きく背伸びをして腕を捲くった

「さーて、まずはこの湖を立派なビオトープにするぞー!」

朝日が昇る空はどこまでも青く。遠くまで澄み渡っていた










結界で外の世界から隔離された世界
そこで寺子屋を営む女性は、ある人物を探していた

「妹紅さーん。どこですかー?」

まるで重箱のような独特なデザインの帽子を被った教師は、竹林の中を呼びかけながら歩いていた

「そんなに大声出すと、ほかの妖怪まで寄って来ちゃうよ?」
「うひゃっ!!」

真上から藤原妹紅が教師の眼前に現れる
妹紅は足の指で竹の天辺を掴み撓(しな)らせて、逆さ吊りの姿勢で現れたものだから教師は腰を抜かしそうになった

「呼ばれたから出てきたのに、そんなに驚かれたら傷つくわ」
「も、もう少し登場の仕方を配慮してください! なんですかソレ!? バンジージャンプでもするんですか!?」
「ごめんごめん。よっと」
妹紅は空中で一回転半して地面に降り立つ
「それで、どうしたの?」
「来週。遠足に行くんです。だから妹紅さんをお誘いに。妹紅さんが来てくだされば子供も喜びますし」
「うーん、どうしよっかなー。慧音の頼みでもそれはなー」
「慧音?」
寺子屋の女性は眉を顰めた
「私の名前は上白沢※※です。もー間違えないでくださいよ~」
「あーそうだっけ? ごめんなさい、人の名前を覚えるのが苦手なの」
「苦手にも限度があるでしょう。この前なんて賢者の会合で隙間妖怪様を八雲『紫』なんて呼んじゃって。しかもあんな大勢の前で」
「あの後は大変だったわね」




来週の遠足は参加すると伝え、教師を竹林の外まで送ることにした

「そういえば、川向こうに一軒屋があるのをご存知ですか?」
「ああ。頑固婆さんがいる家ね、子供の頃は器量が良くて可愛かったんだけど」
「里の最長老のお婆さんの子供時代を知ってるって、妹紅さん一体何歳なんですか? 稗田家の本にも詳しいこと書かれてませんし」
「内緒♪」

いたずらっ子ぽく、指を口の前に立てた
結局、年齢の話はウヤムヤになったので、話を本筋に戻した

「先週。あそこのお孫さんが川遊びしてたら流されてしまいまして」
「なに!?」
「幸い、直ぐに引き揚げられて、飲んだ水もすぐに吐き出したので大事には到らなかったのですが。その子が起きてから妙なことを言ってまして、臨死体験したとかなんとか」
「臨死体験?」
「はい。なんでも『自分は舟に乗りこんだのだけど、船頭がずっとサボッて寝てた』って」
「へー」
「で、意識が戻る直前に『こら小町! またサボってますね!!』って声が聞こえたそうです」




end

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